Co:頭ではわかっているけどやめられないことは何かありますか?
AC:えー、倒れるまで仕事をしてしまうことが何度かありました。それで何度か転職したのですが、。
Co:うーん、なるほど。慢性的な身体症状はありますか?
AC:もうずっと首や肩、腰がなどが痛みます。頭痛、ヘルペスがたびたびあります。あと小さい頃から不眠症です。
Co:うあーだいぶ、たいへんでしたねー。
AC:そうなんですか?・・・。ずっとそうだったからわかりません。
Co:そういった身体症状はどんなメッセージなんだと思う?
AC:メッセージ?
Co:そう、身体があなたに何を伝えようとしているのかな?
AC:やっぱり働きすぎかな、ワーカーホリックと呼ぶんですよね。
Co:うん。人間だから何かに依存することは自然なことだが、本来は生活を豊かにするものでも、自分自身を傷つけるほど邁進してしまうことを依存症という。お酒、薬物(医師の処方薬など)、買い物、過食、拒食など目に見えやすいものと、自分を失うほど他人の世話にのめり込む、自身を傷つける関係を続けるなどの共依存、恋愛、性行為などにのめり込んでしまう関係依存や、倒れるまで働く仕事依存、過剰な運動などへの依存もある。日常生活や仕事などに著しい支障があるときに治療対象となるんだ。
AC:テレビなどで芸能人と薬物との関係が報じられるたびに、依存症の話題がとりあげられますね。
Co:違法薬物の所持や使用はいずれにしても違法行為だね。ここでは、自分自身を失うほどの依存症状態とはどのように経過するのかについて話すよ。
私たちは過去の心の傷(自覚があるなしにかかわらず)や未消化の体験が由来する、強い感情を無意識の領域に放りこむという防衛機構があるんだ。
ほんとうは、「お父さんやめて」と怒っていたかもしれないし
「お母さんこっちを見て!」と泣きたかったかもしれない。
それらが何らかの拍子に圧力や衝動として意識を圧倒してくることがあるんだが、私たちはそれらを感じたくないので否認を続けるんだ。
でも、そうしてばかりいると大切な感情ー例えば、適切な主張としての怒り、の背後にある親密な共感、愛情の交流などーをも感じないようになってしまうので、
親密な情緒交流や人間関係がうまく行かなくなったり、日々の生活が平板化して、無感覚、うつ状態になることがあるんだ。
AC:ふんふん。なるほど。感じないように否認して隠しているんだけど、隠しきれなくなる?
Co:そうだね。不安や恐れ、大声を上げて泣きたい気持ち、親密な人への怒りや、見捨てられる恐怖などは絶対に味わいたくない。ひとたび感じてしまったら「恥辱」を感じるかも知れないし、自分がすべて壊れてしまうのではないかと恐れおののく。
いまの人間関係や仕事のパフォーマンスが落ちるのは自分にとってふさわしくないという信念があるからだね。これまでの自分を維持することができなくなるのは「負け」と思っているかもしれない。
だから、感じないふりをして平静を装ったり、あるいは、はんたいに、興奮することに飛び込んで麻痺させる。あなたにも覚えがある?
AC:手帳に予定を詰め込まないといられないとか?
Co:うーんそれだね。それらの行動はどれだけやっても、もともとの動因・感情、例えば不安などを解消することはないね。でも、手帳の予定が一杯になると、一時的には安心できるかもしれない。スリカエられた充足感(興奮や麻痺)だね。でも、すぐに、不安がやってくるので、また予定で埋めなくてはいけなくなる。こういうように経過して、いっときのスリカエられた充足感を求めてやめられない依存に発展するかも知れないんだ。
AC:うー。スリカエなんですね。だからやめられない!
Co:精神科医の斎藤学は、依存症とは、本人の心身・思考の働きを制限、停止することで、擬似的な平穏をもたらし、「ほんとうの自分の問題」(人間関係の葛藤)への直面をとりあえず、先送りできるというメリットがあるからだと言っている。
(斎藤学引用)
時々、大失敗したときやなんかに、何やってんだ私!と思い返すこともあるかもしれないけど、もともとの感情に向き合うことはひとりでは難しいので、また、スリカエる。
こうして「頭ではわかっているけどやめられない」という時期が続く。
AC:うーん、どうすれば?
Co:例えば、身体症状はたんに働きすぎを警告するメッセージにとどまらない、たぶん、あなたは、断片化している心の部品をつなぎ合わせる必要があるのではと。あるいは、手放す必要のある信念や行動があるのではと。それらの過程はあなたをほんとうのあなたに近づける道になるのだというメッセージと言えるだろう。
AC:えー!
Co:だが、受け取らずにいると繰り返し身体症状がやってくるかもしれない。
AC:えー!
2021.7