オンライン小説『リバウンド』rebound-作品梗概

作品梗概  「リバウンド」

ぼくは『ワイプ』を発症していた。“上手につきあいなさい”と医者に標準治療『セラ』を長きにわたって処方されるが改善せず難治化し人生に苦闘する。薬漬けの破滅を感じ『セラ』を止めるとすぐさま爆発的な反動悪化“リバウンド”に襲われた。全身のヒフが剥げ落ち浸出液が流れ強い不安が四六時中続く。

『ワイプ』患者は医者に通いながら知らない内に『セラ』依存症に陥った。患者らは『セラ』をやめることを望むが、ひとたび止めると猛烈な“リバウンド”が全身を襲った。患者は実質的な廃人となるが医療者は、投薬を続けている限り起こらないのだから“リバウンド”とはありえないとその存在を否定する。患者は生き地獄のような症状と人生を抱えながら、個人の尊厳を医療者に否認され続ける。それは家族、同僚に腫れ物のように扱われ社会から拒絶されることでもあった。患者らは医療から離れ、藁をもすがる状態でさまざまな代替療法らに傾倒するがさらに悪化し社会的な死に追いつめられていく。

地方都市での自殺者の増加について関心を寄せていた雑誌記者が、医療者の説明モデルに構成された事実の蔓延に気づく。一方、『セラ』普及のために行われていた医療カンファレンスで現役の医者が抗議の自殺を図る。彼は息子のリバウンドを救うことができなかったことに苦しんでいた。取材が続くと『セラ』に係る医療者の一人が死亡する。

ぼくは苦境を綴っていたホームページを通じてアメリカ人医師と出会う。彼は日本に“リバウンド”症状があることにおどろく。アメリカでは1950年代に臨床現場から姿を消していた。『セラ』は表面上の炎症を一時的に強力に消すが、心身に重要なある種の伝達物質の生成を抑制し、免疫システムを破壊し強い依存を引き起こすことが解明されていた。彼はぼくをアメリカではもう見ることのできない古いタイプの患者症例として研究対象としてアメリカに招き、数週間で簡単に完治させた。

帰国したぼくは罪悪感に苛まれる。過去の自分のように苦しみ続ける日本の“リバウンド”を見過ごすことができない。体験を伝える活動をすることでかろうじて免罪符としての生きる道を見つける。ホームページに治療体験を公開するとおおぜいの相談者が現れるが、まもなく何者かの罠に陥る。『セラ』に係る医療者を殺した犯人として追われる。

ぼくは元患者に助けられ逃亡し、カンファレンスで抗議自殺した医者の刻銘なカルテデータを手に入れる。『セラ』は医療者ら提供側に多大な利益をもたらせ、患者個人をないものと封じ込めていた。ぼくは医療者側の説明モデルに構成された現実に反撃を試みる。763名の患者個人の意志を同時多発的にネット上に出現させた。個人の意志のネットワークはひとつの現実を全く別の事実で上書きするものとなった。さらに、『セラ』の責任者は娘のリバウンドに直面する。彼女は“上手につきあいなさい”とたしなめる敵ではなく娘であった。娘は父の助けを必要としていた。医療者は、自身らがつくりあげた悪魔のしくみにおののく。

個人の意志の集合体に構成された新しい事実がぼくの殺人容疑を無力化する。しかしながらぼくの存在は出すぎた杭であることは変わらない。理不尽に満ちた世界で生き抜くことは個人が個人であること、私が私であることを抱きしめることであると知る。

2020.8

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