オンライン小説『リバウンド』rebound-012  治験

ドクターボノはシャワーを浴びたばかりの石鹸のにおいがかすかにした。剃り残しが見えた。昨日の事は夢ではないんだ。
「眠れたか?」
ぼくはなんだかまだだまされているような気分で、腹の虫やファイルが収まっていなかったがとりあえずうなずいた。オフィスには昨日の白衣たちがいた。彼らはひとりひとりぼくにうなずいたりスマイルした。なんだか照れる。目の前のピンクの女子が目尻をあげてスマイルしてくれた。彼女は昨日の夜どうしてたんだろうとつまらないことを考えているとドクターが彼らに向かって話し始めた。

「彼はトウキョーマン38歳。勇敢にも症状を開示することについて同意してくれた。先週の金曜日、オオサカでKKログ40ミリを2cc、DDMメタゾン4ミリを2cc投与した。そして、SFAキシン500ミリを1日1000ミリでスタートした。レスキューを終えたら、Dyupumの治験に入る」
「は?」もっとゆっくりしゃべってくれ。
ドクターはぼくを無視した。
「彼の症状は90%が強すぎる『セラ』の投与によって引き起こされていたと考えられる。これはアメリカではもう診ることができない。今後慎重になる必要があるのは長期ミステイクによる免疫システムの変化である。我々はドクターキースと連携をしイミュンラッシュを行う。また、全身がスタッフや他のバクテリアに感染していることは明らかである。我々はバイオプシーでそれらを特定する。副腎の回復のチャンスを待つために4週間の監視が必要である。以上、誰か質問を」
ドクターは腕組みをして若い白衣を見回した。
彼らは今朝もぼくのからだをなめまわしデジカメのシャッターを押し、ノートにペンを走らせていた。
「彼はどのくらいの期間『セラ』を使ったのでしょうか?」
目が細い東洋系の小柄な女性が言った。
「彼は18歳の時『ワイプ』を発症した。それ以来約20年間なのだろう」
白衣全員が息を飲む音が聞こえた。
「さらにおどろくべきことに顔と首のヒフにはセラタイプⅢのギルモVGを使った形跡がある」
ドクターが付け加えた。
東洋系の女性が口を開けて閉じた。他の白衣たちはノーと言った。ぼくは注目されていてその理由が『セラ』であることに奇妙な興奮を感じた。『セラ』に関してこれほど事実を客観的にオープンに会話がなされることがはじめてだったのだ。
「彼はどうしてこのような症状になるまで適切な治療を受けなかったのでしょうか?」
筋肉質で大柄なクルーカットの青い目の男が言った。
ぼくはかちんときて口を開けようとすると、ドクターボノがかぶりをふってそれを制した。
「彼は『ワイプ』発症時から大学病院に通院していたのだ。そこで長期に『セラ』を投与されていた。しかしながら、あー適切な『ワイプ』治療はされていた形跡がない」
若い白衣全員がぼくを見た。そして静まり返った。スマイルもなくなった。

2020.8.30

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