オンライン小説『リバウンド』rebound-046     レナを救出。

ドアの下の隙間から水がひっきりなしに流れている。
「レナちゃ~ん、レナちゃんいるんでしょ?お父さんの知り合いのおじさんだよ、返事してー」二人の男のスリッパはすぐにびしょびしょになった。
小男が携帯を取り出した。
「もしもし、いまお嬢さんの部屋の前ですがね、なんとも返事がありませんわ」
フミはおろおろと手を合わせてドアを見つめていた。
「いや開きませんわ。しっかり鍵がかかってますわ。家中もう水浸しでえらいことですわ」小男が言った。
「わかりましたでぇ、そしたらそうします」小男は通話を切った。
「よしあけてまうで、商売道具使ったれや」
大男がバックから細いアーレンキーとマイナスドライバーのような道具を取り出した。がたいに似合わない身のこなしで体を折り曲げると道具を鍵穴に入れた。耳を鍵穴に近づけてコリコリと動かすと程なくカチリと言う音がして、慢心の笑みを小男の方に向けた。よっしゃあけるでぇと小男がドアを開けた。いっきにひざぐらいまで水が流れてきた。
「レナちゃん~おじさん入るでー」
部屋はカーテンが引いたままだった。異臭がした。小男は床いっぱいに流れている水の中をびしゃびしゃと入っていった。ベッドを見ると布団がはがれていて、シーツが黒い染みで覆われていた。小男はこの染みとにおいを知っていた。
「レナちゃん?」小男が洗面台の下にパジャマのままうつぶせに倒れているレナを見つけた。蛇口からは勢いよく水がでっぱなしだ。
「レナちゃん、どないした?レナちゃん!レナちゃん!」
小男はジャブジャブとかけよってレナを抱き起こそうとして後ろに尻持ちをついてしまった。
「うひゃー、顔が、顔が、顔がない!」
あとからついて来たフミは後ろから覗き込んで悲鳴をあげた。
「おい、せ、せ、せんせいに電話だっ、はやく」
あわてて携帯をとりだした大男の足元に薬の袋が折り重なってゆらゆらと流れていた。

2020.11.14

 

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