傷がじんじんと痛むから、それを忘れるようにさらに良い人にならなければいけないと思う。
そう、その傷は自分が悪いせいでできたものだと思い込んでいる。
でも、傷が深くて痛すぎると、それを穴埋めしようとして極端な理想や成功を求めてしまうだろう。傷の痛み—ほんとうは本当の自分になるための痛み—を感じたくない見たくないと行動してしまうだろう。それは「他人」になろうとしてしまうことになるだろう。
私たちは他人になろうとするときに苦しむ。
「あなたの好きな私になろうとしているのに、どうして？」と
「家族のために我慢して働いてきたのに」
「会社のために犠牲になってきたのに」
「あなたが儲かると言ったから、やったのに」
なんども同じような失望を繰り返し、ひどい二日酔いや自己嫌悪をなんども体験して、自分とはほんとうに生きている資格のない人間なのか？などと、トンチンカンな結論に浸ってしまうかもしれない。だったら、
もう消えてしまいたい、死にたい。と。
AC：はー、そう思ってました。
Co：私たちは他人になることはできない。
AC：頭ではわかっているんですけど。
Co：同じように、自分自身になることも楽な道ではない。
AC：えっ？
Co：さらに、ひとりで向き合うことは容易ではない。
AC：でも、ひとりで答えをださないといけないと思ってしまうんです。
Co：うん。
AC：誰かに頼ることは迷惑をかけることだと。
Co：これまでひとりで生き延びてきたからね。
AC：あ、はい。
Co：さて、そうすると、インターネットが登場する。検索をかけるとインターネット上にはあふれるほどの情報が表示される。こうすれば悩みは解決する！こうすれば理想の自分になれる！なかには短時間で劇的に成功する！というものまであるね。
AC：はい。もー、いつまでも探してしまいます。探せばきっと私が見逃していた方法があるのではと。
Co：いままで、うまくいかなかったのはこの方法を知らなかったからなんだと。
AC：はい。・・・いろいろなセミナーに参加しました。で、最初はものすごく興奮するんですけど、なんだかすぐに飽きてしまって、また探して、を繰り返して。海外まで行ったこともありました。
Co：そうしていると？
AC：私ってほんとうに何やってもだめなんだなと。
Co：自分を責めてしまうでしょ。
AC：・・・。
Co：他者の人生をお手本にすることは意義のあることだ。学びになることが多い。しかし、他者にはなれない。他者のようになろうとすると、結果的に、なれない自分を責めて苦しむことになる。
AC：うーん、どうすれば？
Co：手放すんだ。
AC：えっ、何を？
Co：誰かのようになれば幸せになるというアイディアを。
AC：へー。
Co：自分にしかなれない。
AC：自分の幸せ？
Co：うん。でも、ひとりで自分の内面に向き合うことはやさしいことではない。
AC：あっ、だから、外部に答えを見つけようとしてしまう？
Co：（拍手！）
Ⅰ章：引用文献
１）アダルト・チルドレンと家族 斎藤学
２）アダルト・チルドレン癒やしのワークブック 西尾和美
３）C.L.ウイットフィールド著：斎藤学監訳，鈴木美保子訳，内なる子どもを癒やす アダルト・チルドレンの発見と回復，誠信書房，1997. 罪悪感 、偽りの自己P１８
４）アンナ・フロイト 向けかえ
５）ベッセル・ヴァン・デア・コーク著：柴田訳，身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法，シナノパブリッシングプレス，2016. pp-111,129,184,237,345,347,584
６）自分のために生きていけるということ 斎藤学
７）参考文献（1991 アーヴィン・D・ヤーロム他 ）
８）パーソナリティ障害の診断と治療： Nancy McWilliams 2005
９）自己愛と依存の精神分析、壊れた心をどう治すか？ 和田秀樹
2021.9
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