サイトアイコン ACカウンセリング-明石郁生

複雑性PTSD ac-alive-016 2021.10更新

DariuszSankowski / Pixabay

Co:さて、サブクリニカル(補完的な医療)な領域であると話をした。でも、クライアントさんの個々の臨床像を理解するためには、先人の臨床研究や事例検討を読み解くために精神医療や他の専門家らと共通の言語が必要となる。
例えば、PTSDって聞いたことある?
AC:はい。災害や大きな事故などの体験、、、。
Co:そうだね。PTSDとは「心的外傷後ストレス障害:災害や事故などによる心的外傷体験による日常生活への著しい支障」、精神医療の専門家が使う、DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)に掲載されている診断基準だ。でも、ACの困難や人生への支障を理解しようとすると、それには収まりきれない部分が多いんだ。米国のトラウマ臨床家、ベッセル・ヴァン・デル・コルク(2016)らは、現在のPTSDの診断基準を拡大して児童虐待などが生み出すさまざまな症状を複雑性PTSDという概念にまとめている。

複雑性PTSDの支障とは、養育環境における、過度な期待や干渉、情緒的な無関心、主体の搾取、誤用などの目に見えづらいトラウマ体験の長期反復が由来する、複雑で特徴的なパーソナリティ、対人関係の歪みや様々なアディクションなどがあげられる。

ベッセル・ヴァン・デル・コルク(2016)は、子供時代に養育者によって身体的虐待あるいは性的虐待を受けた人々、最近家族内暴力を受けた人々と最近自然災害を経験した人々の抱える問題についての違いを見出し、PTSDの基準に加えた、対人関係のトラウマ対象のためのあらたな診断基準「複雑性PTSD」を提示している。
ハーマン(1999)は、複雑性PTSDの主な特徴を以下の3つのよう提示している。
1)解離的防衛機制
強い感情の浮上における離人感、非現実感、無感覚症、不機嫌、耐え難い苛立ち感、反復的な自己身体を傷つけたくなる衝動などの適応形態。解離できない場合は「自分は悪い子」と思い込む。
2)断片的自己規定
高められた自己と低くめられた自己とを統合することができない状態にあり、ほどほどの長所とゆるされるほどの欠点とを持ったまとまりのある自己イメージを育てることができない。「良い子」であろうという観念にしがみつく。
3)感情状態の病的制御
自分が良い子でないから愛されないと感じていてて、良い子であろうと執拗に努力するが叶えらず自己断罪を繰り返す。絶えず緊張しているか回避しており、頻繁に爆発するような感情状態の歪みや、素直な感情表現を無意識に歪めてしまう傾向を持ち、自分の気持ちがわからなくなるなどの支障を抱える。

精神科医の斎藤学(1996)は、一見かけ離れた症状が、同一人物に同時に生じ、成長の早期に対人関係上のトラウマを受けた人に見られると述べている。

AC:やっぱりACってたいへんなんだ。
Co:うん、。家族内で覆った心の傷は目に見えにくい。
AC:自分が傷ついているかどうかもわかんないです。
Co:そうだね。複雑性PTSDの支障を持つクライントは、子ども時代に受けた心的外傷を自覚していないことが少なくない。
AC:自分ではわかりません。というか私はわかりませんでした。
Co:うん。愛情のトラブルや人間関係のトラブル、身体症状なんかが耐えられないほどの大きさで表出してきてはじめて直面するかもしれない。それまでは、トラウマ反応の衝動的な表れに翻弄されている状態と言えるだろう。
AC:あーわかります。もっと早く自分がACと知れればよかったなと思います。そしたら、いま、もう少しましな人生を送っていらだろうと。
Co:うん、そう思うのは自然なことだよ。無理もないと思う。
AC:なんで、私だけ。と。まともな家族に生まれればよかったと。
Co:斎藤先生によれば、人はだれでも程度の差があり完全には家族トラウマからまぬがれてはいないんだ。誰でも自己否定を抱えている。「自分がわからない」「死にたい」などの自己評価に混乱している。セラピーを必要であるかは、子ども時代に受けたトラウマの質と量によるのだろうと。<斎藤学 自分のために生きていけるということ>
AC:えっ。だれにでも家族トラウマがあるの?
Co:うん。そうだ。
AC:・・・あんな幸せそうにしている人たちにも?
Co:そうだ。
AC:そうみえないけど。(怒)
Co:私たちは、自身の困難を受け取っていく過程に幸せがある。
AC:えっ?
Co:そのことを、ある人は、大病で気づくかもしれないし、ある人は家族や友人との別れや死別で気がつくかもしれない。ある人は仕事や事業での大きな失敗で気がつくかもしれない。
AC:そんなのなければ無いほうがいいんじゃないですか?
Co:うん、ここはこのセッションのテーマでもあるけど、心の成長とは傷つきと回復の流れなんだ。私たちは「AC」というコンセプトをつかって自らその道程に入っていくことができる。
AC:うーん。

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