サイトアイコン ACカウンセリング-明石郁生

ACの力とは?:感情の力 ac-alive-021 2021.10 更新

DivvyPixel / Pixabay

Co:自分を失う行動や思考について話してきた。
AC:はい。他人の世話ばかりして、。
Co:自分を失っているとは、心と身体(感情)がばらばらになっている状態であると言えるんだ。感情とは身体感覚でもあるから。例えば、倒れるまで働いてしまうなどの繰り返しは、自分自身の「頭、思考」だけに過剰に頼っている状態なのだろう。
AC:思考だけ?
Co:うん、ほんとうの自分の感情、身体感覚を感じるのは都合がわるい。恐ろしいこともあるだろう。だから感じないように見ないようになかったことにする。無意識のなせるわざだけど。
AC:あっ、もしかして生き延びるために?
Co:そう。

どうして感情をふさいでしまうのか? 私たちは自分の感情の持ち方を父や母あるいは養育者から体験して学ぶ。
ブランケットにくるめられた小さな私を見つめている母という人の目を通して。その様子を見ている父という人の眼差しを通して。

Co:こういった過程を経て私たちは自身に感情を内面化していくのだが、その過程ではしばらく、自身の感情が親や養育者のものなのか自分のものなのか区別があやふやな状態を経て育まれていくんだ。
AC:へー。
Co:幼少期になると、例えば、お父さんとお母さんがケンカもしくは情緒的な交流が感じられない場合などに、
あれ、お父さんとお母さんがケンカしていてなんだか不機嫌そうだ。とても不安だ。でもこんな気持ちになるのはぼくのせいだなんだ。
お父さんがお酒を飲んで大声でどなっている。ぼくが良い子でないからだ。
AC:うーん。私がなんとかしなくてはと思う!
Co:子どもはいろいろ必死に試みるかもしれないが。その年令でできる精一杯の行動で。でも、大人のケンカを子どもはなんともできない。というかそれは子どもの仕事ではないね。
AC:切ないです。
Co:子どもにとっては永遠のような切ない時間の経過をやり過ごすために、自分のせいだと丸め込んで感情を塞ぐ。あるいは、こわくてしょうがないから自分の命を守るためにシャットダウンしたり。または、家族の外で不適切な行動化(感情をショートカットした行動にすり替えて発散する。例えば、自傷行為、ケンカやいじめ、万引きなど)をするかもしれない。
AC:うーん。無理もないのでは。
Co:うん。親や養育者に怒りや悲しみの感情を向けないようにがまんして、飲み込んで、なんとか自分なりに頭を使ってなかったことにしようとする。
もし、自分の感情を表したらどうなっていた?
AC:・・・見捨てられる?
Co:そうだ。見捨てられてお父さんとお母さんが永遠に離れてしまう。家族が崩壊してしまうと感じているかも知れない。この時期、それらは自分の心身の死に等しい。
AC:だから、感情を閉じる?
Co:そう。ほんとうは、家族内の不穏な流れが、怖くてしょうがないから説明してほしい、抱きしめてほしい、手をにぎっててほしい。
AC:でも、それを言えない。
Co:そして、感じたくない。だから、小さいながら頭を使って、考えて考えて、子どもなりの論理で理由を探して、つなぎ合わせて、棚にしまいこんで、自分を納得させて、その場をやりすごす必要があった。怒りや悲しみを感じているのは自分が悪いからだ、自分のせいだと。
AC:たいへんな作業をしていますね。
Co:うん。さて、ここからだ。このやり方をパーソナリティと呼ぶ。感情に触れず過剰に「思考」にたよって他者や世界に適応しようとするパーソナリティは思春期以降の恋愛関係に関連した支障が生じていくようになるかもしれない。
AC:うぁ〜、。
Co:愛情関係の距離に混乱して、なんどもつまづくかもしれない。それは青春といえるかもしれないが、なかなか激しいことになるかも。
AC:はい。
Co:一方で、それらをきっかけに隠していた感情や身体感覚に触れるために、自分でも驚く。そして、いったん、怒りや悲しさに触れてしまうとそれは底なしなのではないかと心底恐怖を抱くかもしれない。
AC:もー。
Co:子供の頃から無意識に抱え込んでいた感情や身体感覚の浮上を恐れるのは無理もないよ。
AC:いまでも、とても言いようにないくらい怖いです。自分がどうなってしまうのかと、。
Co:カウンセリングの場では次のような言葉で語られる。
恋人と大喧嘩してしまう。親密な人間関係がきずけない、配偶者や子どもに感情を爆発させてしまう。子どもを愛せないのではないか怖い。
AC:全部あてはまります。(ぐすん)

Co:さて、それでは感情の力とはどのような力なのだろう?
Co:自身の感情に対して恐怖や不安をおぼえてしまう理由のひとつは、感情と「行動」を同一のものと捉えていることがあげらる。
トラウマ研究者のベッセル・ヴァン・デア・コークは、子ども時代に親密な関係の大人に表出できなかった言葉やそれらに関連した感情は身体に記憶されるのだと述べている。
AC:身体に?
Co:うん。ということは身体症状と感情の関連、心身相関的なアプローチは、無意識なトラウマ反応に翻弄される行動や人生に自覚を促し、新たな行動に意識をむけることを可能にする。
また、アメリカの精神科医 A,Lowenは、感情(Feeling)とは単なる考えや信念とは違い、体が関与しているために知的活動以上のものであり、身体活動とその知覚という2つの要素から成り立っている。それゆえ、感情は心と体を一つにし、意識を身体活動と結びつける力とみることができると言っている。(Alexander Lowen 1994 村西詔司・国永史子訳 からだのスピリチュアリティ 春秋社)

つまり、感情は心身がばらばらになっていたあなたをほんとうのあなたに近づけるのだ。
AC:ほー、たとえば、えーと、怒りでも?
Co:そうだ、怒りとは大切な感情の先端だと言える。ただコントロールすることを学ぶのではなく、背景にある「わかってほしい!」という気持ち、身体感覚を紐解く機会であるだろう。
感情とは、ほんとうの自分になるための重要な力なのだ。

2021.10

モバイルバージョンを終了