***ACという生きる力 連載エッセイ!

感情と身体を無視する ac-alive-011

あなたは気が付かなかった。毎回、文字通り倒れるまで自分の身体の状態に気がつかなかった。いや、なんとなく気がついていたけれどなんどもくりかえした。
いい人でいなくてはいけない、断ってはいけない。
誰かを助けなくてはいけない、笑わせていなくてはいけない。
泣いてはいけない、ポジティブでなければいけない。
止まってはいけない、進んでいなければいけない。
いつでも大丈夫だと自分に言い聞かせて、我慢していなくてはいけない。
あなたは、自分の感情をコントロールしようとし続けた。これまで生き延びてきた「自分」をなんとか保とうとして。その結果、幾度も「身体」という限界に気付かされていたのだ。

AC:あっ、そうか、身体には限界があるのか。
Co:そう、感情の限界は受けとめるのが難しけど、身体の限界はある程度わかりやすい。
AC:不調とか病気とか?
Co:それに気がつかないで倒れるとか。
AC:好きでそうしているわけじゃありません。(怒)
Co:湧いていくる感情とは、身体感覚の流れと言える。
AC:隠し続けていると、身体が不調をきたして教えてくれる?
Co:そう。

身体の流れとは意志力のおよばない不随意な命の流れだ。例えば、心臓の鼓動や血流、自律神経系は意思の力でコントロールすることはできない。つまり、「自然」の一部であると言える。私たちは自然をコントロールできないと知っている。自然の流れに抗い続け、幾度も災害というしっぺがえしを体験してきた。

Co:どうして、身体にしっぺがえしをくらうほどをコントロールしてしまう?
AC:えーと、つらい感情を感じたくない、これまでそうやって生き延びてきたから。
Co:そうだったね。例えば、子供時代を過ごした家族の中で、自分のままでそこに存在しても良いのだという承認、ほっとするような安心を得られなかったとする。
子どもは自分が悪い子だからと自分を責める。その厳しさのなかで、生き延びるために
意志の力に頼って、悲しい、苦しい、助けてほしいなどの感情をコントロールすることを最初に学ぶかもしれない。
AC:・・・。(ため息)
Co:いろいろなアダルト・チルドレンに関する研究者らは、私たちの生き生きとしたほんらいの部分を「内なる子ども」、「真の自己」、「インナーチャイルド」と呼んでいる。だから、感情をコントロールして、隠している状態を、「内なる子どもを窒息させている」とか、
「偽りの自己」で生きている、または、「インナーチャイルドが凍りついている状態」というように捉えているんだ。
AC:それぞれ同じことを言ってるのですか?
Co:そう。ここでは、「偽りの自己」を使って話していこうと思う。生き生きとした自分が承認を得られず、安心を感じることが難しかったとする。そうすると、
意志の力に頼って、怒りや、悲しみ、助けてほしいなどの感情をコントロールして、
自分とは、なんでも一人でできて助けなどいらない人間であるという自我同一性(自分が自分であること)を創り上げる。これが、偽りの自己だね。
米国の精神科医のウイットフィールドは、偽りに自己は隠れ蓑で、緊張してびくびくしている。つねに計画と労苦に追われていて、他者を妬み、批判的、理想化して、他者がそうあってほしいと思うものに焦点をあてて、自分を責めると述べている。
AC:あー、もしかして、他人になろうとしている?
Co:そう、他人から見た良い子ね。
AC:うあー。
Co:つまり、そのままの自分でいることができないので、他者から評価を受けるために必死で、自分の感情や身体、人間関係をコントロールしようとする。誰かに承認を得たくて、倒れるまで仕事や他者の援助をしてしまう。だから、自分の人生を生きている気がしないかも知れない。
AC:そう。
Co:身体が悲鳴をあげて、倒れたり、病気と診断されると一息つける。それでやっと生きていると実感できるのだろう。身体がこなごなにくたくたになってはじめて、
あれっ!私、何やってるんだろう?と「真の自己」を感じる入り口がちらりと見えるのかも知れない。
AC:うあ~身体症状ってただの身体症状じゃないんですね。
Co:意志の力への過剰な依存、偽りの自己の限界を身体の限界で体験したいんだろう。それはもしかして、偽りの自己が死にたいのだろうと思う。
AC:死にたい?
Co:うん。そして、心から安心したい、ほっとしたい。そのままでいいと言ってもらいたいんだろう。
AC:真の自己が?
Co:そう。

2021.8

geralt / Pixabay

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