***ACという生きる力 連載エッセイ!

Ⅲ章:ACの力を肯定するセッション 「私」について語りなおす ac-alive-033

自身の心身の安全確保に意識を向け、あなたを「よくここまでがんばった」と肯定する未知な他者ーカウンセラーーとの関係性において情緒の交流がはじまると、あなたの流れはつぎの段階にすすむ。
幼少時にインストールしてそのままでいたアプリの作動に翻弄されて、慢性的な心身症状を否認して、困ってないと装いながら笑顔をつくり、思い通りにならない親密な他者(恋人や配偶者、あるいは父や母、または上司や近所の人)をなんとかしようと状況説明をまくしたてるような「他者」中心で「自分」不在の会話が減り、「私」の物語りが語られるようになる。

「誰も私をわかってくれないない」
「愛されているとはどういう感覚なのかわからないのです」
「子どもに手をあげてしまうのです」
「こんな私が生きていていいのでしょうか?」

AC:つらくなります。
Co:いったい、いま、「私」には何が起こっているのか、また、それらが、現在の生活や仕事、親密な人との関係性にどんな影響を与えているのか、「私」の物語りを語るのはつらい作業になることがある。
AC:う〜ん、必ず必要なんですか?
Co:いや、そういうわけではない。
AC:できれば、向き合いたくありません。
Co:うん。あなた自身に湧き起こる自然な流れが大事だ。
AC:はい。
Co:「私」の内面にあって、子ども時代を生き延びるために飲み込んでいた感情と身体感覚、なかったことにしていた体験などは、例えば、脳科学の視点では、加工されないままの生の大容量データが適切なフォルダに仕分けされて保存されないまま宙ぶらりんになっている状態と言える。
だから、OS(オペレーションシステム)ー現実検討ーが機能不全に陥り、日常のストレスをきっかけに突如浮上するートラウマ反応ー衝動的な怒り、または感情の失読、解離など現実意識に多大な影響を及ぼす反応に翻弄される。AC:うーん、なるほど。
Co:これまで、一度も外に出ずにいた身体感覚や感情とともに「私」の失われたものを嘆く「喪失」の語りを、安全な場でカウンセラーや好意的なグループに共感的に聞いてもらえた、受け止めてもらえたという静かな体験はとても重要なんだ。その物語りは「私」ほんらいの命の流れに触れる機会となる。

AC:・・・安全だから、ほんらいの命の流れに触れることができるのですね?
Co:そうだね。「私」の「喪失」について語ることはつらい時間を経過することがあるかもしれないが、大事なのは、それらはアプリ作動に翻弄された反応ではなく、「本来の私」であるという点なのだ。
AC:はい。
Co:大人になった「私」がー安全な関係性の中でー大人の言語と感情をともなって言葉にする体験は、例の生の大容量データを、例えば、画像、テキスト、身体感覚などの大人の知覚として処理して、しかるべきフォルダーに収納するというプロセスを促すんだ。
AC:脳内でデータがフォルダに? あー、ハードディスクに整理されるんですね?
Co:その通りだ。例えば、漠然としていた底なしの不安が、具体的で健全な不安に整理される。そうして、大人の自我がデータを整理しはじめると、複数の脳機能がつながりを促し、目の前のストレスに統合的な対処ができるようになる。
AC:うーん。
Co:そうすると、無意識に翻弄されて笑顔をつくってしまうような反応や、パニック発作のような身体反応、「頭でわかっているがやめられない」というような依存行動が減っていくだろう。

「私は、良い子になろうとして、自分を殺して生きてきたことに気がつきました」
「心の中が空っぽに思えます。これからどうしたらいいのでしょう」
「小学生の時に母に向けて強い殺意があったことを思い出しました」

これまでの後悔や将来への強いあせりなどの言葉があらわれ、ときには、とてもつらい時期を過ごすこともある。もちろん、カウンセラーも自身自身に同じような感情の流れを感じぜずにはいられない。
斎藤学によれば、この時期の悲嘆とは、旅立つことへの危険やおそれにともなうショック、不安、怒りという不快な感覚からはじまり、痛みや絶望の感覚に襲われ、喪失にまつわるさまざまな記憶がよみがえる。この段階は、カウンセラーとの信頼関係(治療同盟と呼びますが)とても大切である。(ハーヴィー、斎藤学引用確認、記載)

AC:カウンセラーもつらくなるんですね?
Co:時間の流れを共にすごす。
AC:・・・私は、「私」について語ることができるようになるでしょうか?
Co:うん。
AC:うん? どうしてそう思うんですか?
Co:このような機会を見つける力があるからいまここにいるのでしょ?
AC:あっ。

2022.1

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