Ⅴ章:自分の専門家になるためのエクササイズ ac-alive-066  身体症状をワークする。

AC:身体症状って病気ということですか?
Co:う〜ん、もう少し広い意味を含めている。いま起こっている身体症状を体験するまでにどんな過程があったのか?また、その体験とは、どのような命の流れなのだろうか?と、探求するための身体からのメッセージと捉えるんだ。
たとえば、世の中には大病を経て、人生観ががらっと変化したと話す方は少なくないだろう? 病気の体験とは私たちに症状や困難に加えて、人生になんらかの示唆を与えるものであることは先人らの文献などにも枚挙に暇がない。もちろん、病気には適切な医療が必要なのだが、ここでいう身体症状とは、例えば、慢性的な抑うつ症状や不眠症、感情の爆発、首や腰の痛み、難聴や耳鳴りなど心理的要因が大きく関与していて、投薬治療が効きにくい状態をとりあつかうよ。
AC:はい。
Co:身体症状とは、言わずもがな、無意識の行動や思考の産物であるといえるだろう。誰も意志をつかって病気や身体症状を起こすことはできないだろう。
AC:そりゃそうです。できれば、身体症状などは起こしたくありません。
Co:ふむ。さっきは投影を取り扱うことで、ふさいでいた自分の断片を明らかにすることができる機会を開いたね。投影も無意識の産物だね?ということは、身体症状とその背後にある流れやパターンを取り扱うことは、さらに自分の断片化している部分に洞察を深めることが可能なのだろうという仮説に基づいているんだ。
(A、ミンデル)引用符
AC:なるほど。
Co:私の事例で言うと。私は長いこと不眠とつきあっている。幼少の頃はとにかく眠るのが怖かったと記憶がある。眠ろうとすると不安や興奮のようなものが襲ってきた。
大人になってからは仕事や運動で疲れ果てて倒れることが眠りにつくことだと思っていた。カウンセラーになる勉強を始めてから自分を振り変えることで、要因のような体験があると知った。でも、知ったからと言って解消されるわけでもなかった。
眠れないというのはなかなかつらいものだ。だから、不眠を排除するより、どんな意味なのかワークする方を選んでいる。
といったわけで、私は自分を探求するツールとして自身の身体症状である不眠症をワークし続けている。それらから得たものはとても大きくいまの私を支えていると言える。
AC:それを聞いてもいいんですか?
Co:うん。ざっくりね(笑)
私のパーソナリティとは病気と身体症状と共に変容を重ねてきたと言える。
いま現在取り組んでいる身体症状は不眠である。
もともと、うまく眠れない子どもだった。物心がついたころからだ。
いちばんひどいときは、ベットに横になったものの
「どうやれば眠れるんだっけ?」と考えなければいけなかった。それでまた眠れない。
ときには医者に行って薬をもらったり。お酒をたくさん飲んでしまうこともあった。
いけないいけないと、いろんなリラクゼーションを試してみたり、睡眠に関する本を読んでみたりと、これまであらゆることを試した。診断名をつけて助けになることもある。
いま、気に入っている名前は自律神経失調症。臨床心理学的にはトラウマ(心的外傷)が由来する対象喪失不安。安心して眠るという体得が不全だった。
いまでは、私にとって不眠は、「いま、ここ」に大事なものが流れているぞ、そこに意識を向けろという警告なんだと知った。もう、誰かのために世話を焼くのは十分だからその役割を破綻させて倒れろ!というメッセージだと気がついている。
私は「意志の力」に頼り過ぎだったのだ。とうぜんのように聞こえるけど、「意志の力」で、眠りにつくことはできないんだ。
AC:力で眠ろうとしても眠れないものね。
Co:そうだね。だから、どうしていいのかわからなくて苦しんだ。受け入れるまで。
私は、タフな生育歴の間に、心身を預けて安心を感じることが難しかったのだと知った。それゆえ、意志の力を過信して生き延びてきた。不安を意志の力で解消するように。
私の事例では、不眠からワークすると、虚栄心を持っていることに気がつく。存在の不安に関して、意識では、そんなことは大丈夫だ。と言い聞かせてきた。施設での体験も理不尽な大病もここを乗り切れば普通になれるんだ!と。
いつもいつも戦いながら願望を見て生き延びてきた。つまり、「いま、ここ」の現実を見ていなかった。つまり、私にとって「意志の力」とは、受け入れ難いが、子供時代、環境が厳しくて、生き延びるために使ってきた意識行動であったことに気がつく。
広告会社勤務時代もずっとこれをやっていた。そして、なんども倒れた。
傷ついていた。無理も無いのだ。自分はそんなに強い人でも良い人間でもない。と受け入れるまで時間がかかった。不眠とのワークはその助けになった。

AC:たくさん聞かせてくださってありがとうございます。
Co:すこし喋りすぎた。
AC:いまでは不眠はどうしているんですか?
Co:うん。どのように自分と接したら不眠になるかを探求している。つまり、身体症状を創り出す、創りてのやり方を知っている。
AC:えっ?
Co:つまり、身体症状を創り出すプロセスにとりくめると、身体症状を解消するプロセスがわかるということだ。
AC:どういうことですか?
Co:うん。私の事例では、例えば、論文を書くのにこんつめて遅くまでうんうんうなったり、カウンセリングで、私のできる範囲以外の感情や責任を覆ったり、と、私自身の限界設定、枠組みを超えたときに不眠になる。
AC:なるほどー。
Co:だから、不眠になったら、あー無意識に何か背負い過ぎだな、自分に圧力をかけてるなー、なんだろう?と振り返ることができる。その振りな返りは、いままで気が付かなかった自分に気がつくことができる。もういっかー。今日は少しスローダウンしてみようか、今朝はあまり眠れなかったから、どうせ原稿もはかどらないから、さぼってサーフィンでもしようかなとか(笑)
そうすると、結果的に、たぶん、深刻な不眠や病気にならなくて済むかもしれない。
AC:私もやってみたいです。
Co:うん、自分の多様性に気がつくプロセス。は、癒やしであり、変化であり、治癒的に働くよ。

さて、ここでは眠れないという身体症状がある人であると同時に、私は不眠という「症状を創り出している人」でもあるという視点で自分をワークしてみる。
AC:ワーク?
Co:心身に起こっている知覚について敬意を持ってとりくむ作業だ。
それでは、早速、自分にワークしてしてみるよ、手伝ってくださいね。
AC:はい。
Co:(自分に向かって)「あなたはどのように症状を創り出していますか?」(深呼吸)
「・・・身体感覚に従わない、疲れを感じないようにしている。仕事を詰め込んでいる」
どうしてそうするんですか?って聞いて。
AC:どうしてそうするんですか?
Co:うん、とても急いでいるような気がする。すぐに興奮したい!不安を解消したい!
それにはどんなメリットがあるのって聞いて?
AC:それにはどんなメリットがあるのですか?
Co:そうだ、メリットがあるから、身体感覚に従わない、疲れを感じたくない。
・・・いまここで思い浮かぶメリットを挙げてみるよ。
人生をコントロールできていると思い込むことができる。・・・そうやって自分の力を誰かに証明できる。あっ、がんばってることを誰かにわかってほしいんだ!
AC:・・・そうなんですか?
Co:私はいまこうして生きてることをわかってほしい。
AC:誰に?
Co:・・・。わかっているよ。って言ってもらっていい?
AC:わかってるよ。
Co:・・・。いま、どんな気分ですか?と聞いて。
AC:いまどんな気分なんですか?
Co:少し安心したような、呼吸が通るような。スローダウンするような気分。
ワークにつきあってくれてありがとう。

身体症状をワークすると我に帰ることができる。自分が自分自身にどのようなあつかいをしているのかを。もし、不眠症がなかったら、どれだけ緊張した仕事をしても、問題をいくつも抱えても、夜、眠ることができたのなら、仕事を制限せす、問題を抱え続け、ロックンロールショーのような毎日を今でも過ごしていただろう。
いまでは、私は身体症状の力を自覚する毎日のおかげで、問題を抱え過ぎたり、仕事を引き受け過ぎて倒れたりする状態から逃れられている。
でも、当初は、なまけているのでは? 冷たい人間になってしまったのか?と自分自身を責めてしまうこともあった。
サラリーマン時代を知る友人には、たぶん、人格がかわったように映るだろう。当時の私はなんでも引き受けてやりとげてなんぼであると思っていたから。
友人との付き合いもだいぶかわった。以前は、たくさんの仲間とわいわいとさわぐことに夢中だったが、いまでは、一人を楽しむことがおおい。散歩もサーフィンもだいたいひとりで、海上がりは好き勝手に赤ワイン飲んでジャズ聞いている。
不眠症という身体症状は、私をそういう人に変化することを求めたのだ。つきあい悪いがすくなくとも私らしいと感じるし、心地よい。

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ベットに横になると、美味しく飲んだ日本酒が真夏の霧のように覚めるのを感じる。
みぞおちのあたりに、しこりのような痛みを感じる。
いいようのない感情。これを不安というのだろう。自律神経のメッセージ。
誰にも頼れず人生の長い時間を過ごしてきた感覚を思い出す。
ほんとうのところは誰も助けてくれないと思っていた。
いまここに居る。と思う。
夏のある朝、ふとんから起きあがると不眠症が解消しているわけではないが、なんとなく少し眠れていると知る。
自分の瞑想ワークからはじめてみる。難しいことではなく、呼吸に気がついてみることにする。
明らめたような静けさと新しい興奮を感じるが、急がなくていいのだと思える。
身体はあちこちに硬さを感じている。
カーテンを開けて、お湯を沸かす間に身体のワークをしてみる。


 

2020.11.11

 

 

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