Ⅴ章:自分の専門家になるためのエクササイズ ac-alive-067  夢をワークする。

Co:もし、夢を探求しないとすれば、私たちは養育環境からの影響、例えば、こうあらねばいけない、というようなずっと最初のインストールに反応して生きていくことになるかもしれない。
AC:えー?どういこうこと?
Co:朝起きて、歯を磨いて、テレビのニュースを見て、学校や仕事にいく。
AC:一般的な日常だと思いますが。
Co:私たちは、自分が自分であるというアイデンティティ(自我同一性)を満たすように自動的に思考し行動する傾向がある。例えば、親の期待に応えるために、あるいは、社会の要請に応えようと自動的に努力を続ける。それが行き過ぎるとどうなってしまう?
AC:あー、えーと。毎日自動的に他人になってしまう?
Co:そうだね。自分を失ってしまうことがある。そして、それに気づくのは難しい。
だから、夢のワークをすることは、あれれ、本当の自分ってどいういう人だっけ?と振り返るのにとても大切な機会になるんだ。
AC:内面に気づきを向けるということ?
Co:そうだね、。身体症状を見ないでいると倒れるね。それで気がつく。身体症状と同じように夢は無意識の領域から浮上してくるメッセージと捉える。つまり、夢を探索することは、意識では処理を後回しにした自分自身の断片化した部分に気づくことができる。
AC:怖い夢でも?
Co:そうだ。私の探求している夢についてのワークは、夢とはどんなものでも夢を見ている人にとって有益なものであるという視点なんだ。
もしかしたら怖い夢とは、夢があなたに伝えたいことがあるのだが、なかなか伝わらないから、あなたがいちばん怖がる演出をしたのかもしれないと。
AC:ふーん。
Co:心理学で勉強したと思うけど、フロイトは夢は無意識へつながる王道だと言って、治療者が夢を分析した。ユングはクライアントと共に意味や目的を考えていくスタイルをとった。パールズは、夢を通して断片化した自己の統合をはかろうとしてゲシュタルト・セラピーを発展させた。ユングに学んだ、A,ミンデルは、フロイトの先駆的研究から85年経った現在、「ドリーム・ボディ」と言う概念を提示している。

参考文献
山中康裕著:心理学対決フロイトVSユング,ナツメ社,2010
F,パールズ著:倉戸ヨシヤ監訳,ゲシュタルト療法ーその理論と実際ー,ナカニシヤ出版,1990
アーノルド,ミンデル著:高岡よし子他訳,ドリームボデイ・ワーク,春秋社,1994

AC:「ドリームボディ」は覚えています。自分自身になろうとする力でしたね。とても新鮮でした。アートな印象を受けます。
Co:事例をひとつ。彼は小さい頃から白昼夢少年だった。授業中、黒板を見ているようで頭の中では何か映画のようなものを見ていた。また、幼少の頃、悪夢を毎日のように見ていて夜が怖くてどうしようもなかった。布団に入ると目をつぶり、ウルトラマンの兄弟やミラーマンを思い浮かべて、彼らの得意技と力を神様に伝える儀式をずっとやった。
そのうち、それらをノートに書くようになった。そのノートは膨大な量に及んだ。いまでは、そのノートは彼の仕事や生活、人生を支える大切な泉になった。
AC:・・・もしかして彼って。
Co:それで、彼は、自分を探求するワークとして、毎日の夢を詩のような雑多な文章として書くようになった。自己像の混乱や共依存的な人間関係に粘り強く取り組んでいくことができたのは夢をつかったおかげだろう。
AC:ふ〜ん。意識や思考だけではなくて?
Co:夢に取り組むことは、自分の他の側面に触れることができるといえる。
AC:頭ではわかっていてもやめられない!ですね?
Co:例えば、トラウマ反応に翻弄されている行動、闘争、逃避反応やシャットダウン反応などは、神経生物学的な身体の不随意反応であるために、意識が及ばないことが少なくない。なので、言葉を中心としたコンテンツを使うカウンセリングなどが行き詰まることもある。
AC:カウンセリングが行き詰まるんですね?
Co:そうだね、特に、自分との関係性をあつかうときだね。例えば、原家族由来のつらい感情を再体験するような場面に出くわすと、それが、日常生活であれワーク中であれ、激しい怒りの感情が表出してしまう、または、意識をシャットダウンして何も感じないようにしてしまうなど。
AC:無意識な身体の反応? 自分との関係性?
Co:夢は、体験する脳の領域に気づきを与え、変化を促すことができるかもしれない。
AC:私も変われるかな~。

Co:さて、理論はこれくらいにして、共依存関係に取り組んできた、彼の夢をご紹介する。この夢以降、ゆっくりとおおきく彼の仕事への姿勢に変化が表れた。ワークにとりくんでいくと、これまでの自分のやり方をほとほとばかばかしく思えたのだろうと思う。

○月○日の夢

彼は誰か知らない人の難しい子どもをあずかっている。
彼は何をするにも、それが気がかりで楽しめない。
仕事のパートナーKとタクシーにのっている。
両端が崖になっているくねくねした道をタクシーがものすごいスピードで走っている。
Kが「こわいー」と叫んで彼にくっつく。
彼は、親密に感じながらも「?」という違和感を感じる。

ホテルのオフィスに着く。Kの母に、Kが新しいクルマを買うとだだをこねている。
Kの母は、買って持って帰ればええやん、と言っている。

彼は、えーと驚き、力が抜けて「親とはそんなものなんだ」と感じている。
(注:親子の関係、ビジネスパートナーとの関係に力が抜ける体験をしている。彼は、自分のクルマを手放してまで、仕事のピンチに邁進していた。)

オフィスの2階で、例の難しい子どもは、シッターさんらしき女性になついている。
彼は、どっと疲れを感じている。
彼は自分の仕事のために出かけたいと思っていて、子どもを置いていきたいが、自分の責任のような気がしている。

彼は、なんで自分の責任なのだと腹が立てている。なんで、私が、他人の子どもの面倒を見ているのだ。アホか!
彼は自分の「めんどう」にのみ責任があるし、それさえも、十分に取れるのかわからないのにと感じている。
彼は自分の責任をとることだけに、いっしょうけんめいになる。と決めた。

AC:わあーおもしろい夢ですね。
Co:自分自身を後まわしにする物語りの終焉だ。
AC:絵に描いたような。
Co:さて、夢をノートに書き留める習慣だけでも、とても自分の他の側面への気づきが深まるが、すこし、技法を解説してみるよ。

夢の中に登場する人物、対象は自分自身だという仮説を立てます。夢をノートに書いたら、それぞれの登場人物や対象になってみます。
先程の夢の事例で説明してみると、
夢を見た人、ここでは、彼だね。まず、しっかり彼になってみて、どんな気分になるか?どんな気付きがあるかを体験してください。

次に、パートナーKになってみて、どんな気持ちになるか?体験してみてください。体験したことをノートに書き留めると良いと思う。後で見返すとさらに、とてもおもしろい体験になると思う。

次に、Kの母になってみて、セリフを言ってみてください。どんな気分になりますか?

Co:夢をていねいに探求することは、自分自身の全体性に近づくことができると体験してきた。もし、夢を探求しないとすれば、私たちは、親や世間のインストールに反応して、ずっといきる人生となるのかもしれない。

2020.11.18

 

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