***ACという生きる力 連載エッセイ!

私がいなければこの人はだめになる ac-alive-013

AC:とても馴染みのあるフレーズです。
Co:そう?
AC:元主人と結婚するときにそう思ってました。がっつりと。
Co:「支えなくてはいけない」、「この人につきあってあげないといけない」
AC:そうです。
Co:どうなったの?
AC:う~、あまり思い出したくありません。・・・彼は会社の同僚で、まじめな人で、うつだったのですが、お酒やめられなくて、。それで、いつもケンカになって。
子どもが小学校に行き始めた頃、「もういいよ、僕はお酒やめれないし、自分の面倒は自分で見れるから」って言われて、。
「私がこんなにやっているのはあなたのためなのよ!」って爆発したんです。
Co:そうだったんだ。
AC:その後、いろいろやり直そうとしたんですけど、離婚することにして、。
Co:うーん、たいへんだったね。
AC:それからしばらくして、心にぽっかり穴が空いたようになってしまって、何をしたら良いのかわからなくなって、気がついたら子どもに手をあげてしまったんです。
Co:うーん。
AC:眠れなくなって心療内科に行ったら、うつって言われて。私が?って驚いて、それから、あちこちセミナー行ったり、本を読んだりで、ここまで来たんです。
Co:うーん、よくがんばったね。
共依存とは、自分を失うほど他人の世話焼きにとらわれたり、自身を傷つける人間関係を続けてしまう行動様式だ。育った環境で、情緒的な関心が希薄な状態が長く続いていたことが由来するのだろう。私ががんばらないと関心を向けてもらえない。お世話していないと私の居場所はなくなる。など強い不安や寂しさが行動の背景にあるのだろう。

Co:ところで、共依存にはメリットがあるんです。
AC:メリット?なんですかそれ、こんなにたいへんなのに?
Co:例えば、あなたが、子どもの世話焼きに奔走することで得をすることがあるとすればどんなこと?
AC:えーと、子どもが愛情かけられて良く育つ?
Co:あなたのメリットは?
AC:子どもが健康的に育つと親として安心する?
Co:思春期にあれもこれも世話を焼かれている子どもはどんな気持ちになるのかな?
AC:あっ、。(自分の思春期の頃を思い出す)
Co:無意識な共依存者のメリットとは、自分自身の気持ち、例えば、「強い不安や寂しな」に向き合わなくてすむことだ。
AC:え?
Co:子どもにあれこれうるさく言うことで、ほんとうの自分の気持ちを見なくて済む。
他者に意識を向けていることで、なんとか自分を保つことができる。
AC:・・・(怒)そんな、。
Co:でも、本当の気持をスリカエているから自分自身の強い不安や寂しさはいつまでたっても満たされることはない。で、成長した子どもが世話焼きをやらせてくれなくなると、「なんで言うこと聞かないの、あなたのためなのよ!」と爆発する!
AC:だって、。

そうした時に、自分自身の心ろ身体を失うほど、倒れるまで奔走している関係に気がつきはじめるかもしれない。ひどくいじけたり、虚無的な考えに襲われたり、あるいは、うつ症状になるかも知れない。
そうすると子どもは、親のその状態を見かねてまた過度な世話焼きを許す。そうして、さらにまた共依存が成立するという悪循環が続くのだ。目に見えない共依存はじわじわと親と子の境界線をあやふやにして、主体のないひとつづきのまゆのようにお互いを縛り合う関係となるかもしれない。耐えられなくなった子どもは、自分の力を試すために攻撃的な行動を試みるかも知れない、はんたいに、自分の力を封じ込めるために引きこもるかもしれないんだ。

もう一つ、親子関係に限らず、仕事や会社との関係性に起こる共依存を挙げておく。この事例では共依存の関係に翻弄され、本人の健康な自己愛が未発達な段階であると言える。
Aさんは、広告代理店で働いているが、入社当初から、会議の前の緊張した空気、ケンカ腰の議論などの場面、取引先との接待などがつづくと体調を崩していた。彼は、そういった場面では、常に他者を喜ばせなくてはいけないと強迫的な思考や行動をとってしまうのだと話している。

Co:彼にはどんなことが起こっている?
AC:自分の気持ちをスリカエている?
Co:うん、そのまえに、自分の気持ちがわかっていないかもしれない。
AC:自分の気持がわからない?
Co:そう。自分を守れないほど緊張している、あるいは、自分は助けが必要な状態であることなどだね。
AC:なるほど。
Co:他者の例だとよく分かるでしょ?
AC:うーん。
Co:彼は、「私がこの難題を引き受けないとこの会社は潰れてしまうのだ」という肥大した観念にほんろうされてしまっていた。他者のために、自分が何ができるかを証明するために身体を削っていたと言えるね。
そして、ある時に、上司に低い評価をされたことをきっかけにひどいうつ症状に陥った。
AC:うつ?
Co:他者のためにしてきたこと、この事例では仕事が評価されないということを、自分が全否定されたと捉えてしまうんだ。自分であればいいという自分を支える自分を失ってきたと言える。このことは、心と身体にとっては恐ろしことなので、うつ、という身体症状はとても、健康的で必要な流れであると言える。
AC:うつが必要?
Co:そう。

2021.8

Pexels / Pixabay

関連記事

  1. Ⅳ章:「自分の専門家」になる冒険 ac-alive-046 コンセプト…

  2. 『ACという生きる力』目次 ac-alive-002

  3. Ⅲ章:ACの力を肯定するセッション 関係性、自己の育て直し ac-al…

  4. Ⅲ章:ACの力を肯定するセッション ac-alive-039 怒り…

  5. Ⅳ章:「自分の専門家」になる冒険 ac-alive-058  私自身で…

  6. Ⅴ章:自分の専門家になるためのエクササイズ ac-alive-069 …

  7. Ⅳ章:「自分の専門家」になる冒険 ac-alive-048s ACの回…

  8. Ⅳ章:「自分の専門家」になる冒険 ac-alive-050   エッ…