Ⅲ章:ACの力を肯定するセッション 生き延びるための力~ポリヴェーガル理論 ac-alive-041

Co:ACの力を肯定するセッションのキーワードとして傷ついた自己愛、共依存が由来する生き延びる力について話してきた。ここでは、神経生理学的ポリヴェーガル理論の視点から生き延びる力やトラウマ反応について話そうと思う。
AC:うあー、トラウマ反応? なんか怖そうです。
Co:いや、そんなことはないよ。生きている人間の自然な反応のことだからね。
AC:自然な反応かー。
Co:米国の神経生理学研究者、ポージェス博士は哺乳類の神経系の進化と社会的な行動とを結びつけるポリヴェーガル理論を提示している。この概念は心理療法家が社会的交流によって生物行動学的な調整力を回復するための治療的な戦略を開発するための土台を提供している。(引用マーク)
AC:どういう意味ですか?
Co:うん、これまで話してきた、セラピストとの関係性をつかって生き延びる力を肯定していくセッションや集団心理療法など複数のメンバーとの相互情緒交流作用の治療因子を生物学的視点から理論的な証拠を提示してくれている。
AC:はぁ?
Co:私がこれまで心理臨床に取り組んできていくども経験してきた困難なケースの反応過程を不随意で自然な反応なのだと、ポージェス博士は述べていて、私はとても勇気づけられている。
AC:ほー。
Co:例えば、トラウマ反応に対する自律神経系の影響が明確に記されていて、家族トラウマの後遺症に悩むクライアントさんが抱える複雑な症状や反応行動、または、前述の言葉を使うと、自己愛の損傷から発現するさまざまな依存症や心身症について、私のような小規模な資源の個人開業カウンセラーにも理解の糸口がつかめて治療方針を検討する機会を開くことを可能にしてくれるんだ。
AC:もしかして、家族トラウマの後遺症、共依存のカウンセリングって難しいんですか?
Co:うん。子ども時代に負った心的外傷とは複雑性PTSDのところでも触れたように目に見えにくく、長い期間にわたっているという特徴がある。
AC:たしか、過度な期待や干渉、情緒的な無関心、主体の搾取、誤用などでしたね。
Co:うん、。さらに、後遺症や問題症状として出現するのが、児童期以降のケースがおおく周囲の家族はもとより本人も自己愛の損傷を受けていたかどうかわからないことがおおい。
AC:そうかー。
Co:だから、本人が困り果てて、意を決してカウンセラーを訪ねてくださるときは対人関係トラブル、感情・身体症状が複雑に絡み合っていて糸口が見えにくいことが少なくない。
AC:だいぶこんがらがってから表面化するのですね?
Co:うん。

「彼氏と大げんかばかりしてしまうが離れられない」
「夫にキレてしまう」
「親密な人に怒りが爆発してしまう」

「うつ状態を繰り返して会社を休んでしまう」
「不眠が何年も続いていて、薬がやめられない」
「首、肩、腰が慢性的に痛む」

「食べ吐きがやめられない」
「仕事で何度も倒れてしまう」
「強迫的な行動がやめられない」

「主人がお酒を飲んでひどい言葉を言う、私がなんとかしなければ。」
「キケンな人ばかりとつきあってしまう」
「恋人に依存する、分かれるを繰り返してしまう」

「人との距離感がわからない」
「自分が誰なのか、何が好きなのかわからない」
「子どもを愛せない」
「私は誰にも愛されない」
「消えたい」

Co:自分の家族以外のことを深く知る機会はなかなかないものだね。だから、自身の養育が不安定や不適切な環境があったのかもしれないと気づくのは難しいかもしれない。テレビで報道される事件や周囲に比べるとそこまででもないなと。また、自分の困難に家族の影響があるという認識は持ちたくないものだ。
AC:私もそうでした。

「うまくできないのは、自分が怠けているからなのです」
「夫を愛せないのは私が悪いからなのです」
「父と母が仲良くなる方法を教えてください」
「怒らないですむ方法を教えてください」
「どうしたら彼がお酒をやめるのか教えてください」
「頭ではわかっているけれどやめられないのです」
「子ども愛せない私はへんなのでしょうか?」

Co:ポージェス博士によれば、異なる状況(幼少期児童期)においてそれぞれ適応的行動をとるための神経的基盤、自律神経がどのように機能するかは、発達の過程で状況に応じてその神経回路が用いるか決定づける能力が形成され、ストレスの状況に応じて社会的な行動と2つの自己防衛反応、闘争と逃走、さらに身を隠したり、死を装う不動状態をとることがある。(引用マーク)P6
AC:え~と?
Co:誕生~幼少期児童期のいつ頃にどんな不安定・不適切要素があって、それにどのように神経回路が機能して、それによってどのように心身が反応し生き延びる対処をするのか。
AC:・・・。
Co:その時に優勢的に機能し使われた対処反応とは、生物学的個体がまさに命を守るために必要不可欠なものだった。
AC:生き延びる力ですね?
Co:そうだね。つまり、家族トラウマの後遺症とは、大人になったいま、もう必要のない、もしくは、他の対処方法もつかうことができるときにも、幼少期児童期に培った対処方法のみに無意識に過剰に反応し、あるいは翻弄され、解消しようと必死に抗っている状態である、と仮説することができる。それらが、表現型として症状や悩みや苦しみとして発言されているのだ、と。
AC:ほー。
Co:だから、症状や悩みや苦しみに敬意を払い肯定するというアプローチは有効であると言えるだろう。解消を目指すばかりではなく。
AC:はー。
Co:ACを肯定するセッションでは、彼女の話される症状や悩みや苦しみ内容にそって、論理的に合理的な解消を示すことに加えて、彼女の発する言葉の背後に流れる、非言語な感情や不随意な神経系反応・身体感覚について、共に意識を向け探索するアプローチになるのは自然な流れなのだろうと思う。
AC:ふうむ。

2022.3

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