Ⅲ章:ACの力を肯定するセッション 家族トラウマ反応に自覚を向ける ac-alive-037

米国の神経生理学研究者、ポージェス博士は哺乳類の神経系の進化と社会的な行動とを結びつけるポリヴェーガル理論を提唱している。この概念は心理療法家が社会的交流によって生物行動学的な調整力を回復するための、治療的な戦略を開発するための土台を提供している。
(引用文献)

Co:ポリヴェーガル理論を臨床的な応用に的を絞った本を読んだのだが、とてもわかり易いんだ。人間行動に対する自律神経系の影響が明確に記されていて、家族トラウマの後遺症に悩むクライアントさんが抱える複雑な症状や行動、前述の言葉を使うと、自己愛の損傷や共依存行動について、私のような一介の開業カウンセラーにも理解の糸口がつかめるんだ。
AC:へー、家族トラウマのカウンセリングって難しいんですか?
Co:うん。複雑性PTSDのところで触れたように、子ども時代に負った心的外傷は、目に見えにくいものがほとんどでしょ? 事故や災害などと違って。
AC:はい。たしか、子ども時代の過度な期待や干渉、情緒的な無関心、主体の搾取、誤用などでしたね。
Co:そうだね。それらのトラウマ反応、後遺症が問題になるのが、思春期以降のケースがおおいので家族はもとより本人も、トラウマを受けていたかどうかわからないことが少なくないんだ。
だから、本人が生活や仕事関連で困り果てて、カウンセラーを訪ねてくださるときは、次のような人間関係と感情、身体感覚が複雑に関連した主訴(最初の相談内容)になることがほとんどなんだ。

「彼氏と大げんかばかりしてしまうんです」
「夫に切れてしまうんです」
「怒りが爆発してしまう」
というような親密な人間関係のトラブル、

「うつ状態を繰り返して会社を休んでしまう」
「不眠が何年も続いていて、薬がやめられない」
「大きな病気がいくつもある、将来に不安を抱えている」
「首、肩、腰が慢性的に痛む」というような身体症状、

「食べ吐きがやめられない」
「仕事で何度も倒れてしまう」
「不安で強迫的な行動がやめられない」

「主人がお酒を飲んで、ひどい言葉を言う、でも離れられない」
「キケンな人ばかりとつきあってしまう」
「異性に依存と切れるを繰り返してしまう」などの共依存

「自分が誰なのかわからない」
「子どもを愛せない」
「誰にも愛されない、消えてしまいたい」

それで、ご本人は、それらがトラウマの後遺症であるかもしれないという認識は全くと言っていいほどない。

AC:あー、なるほど、私もそうですが。
Co:そうすると、

「うまくできないのは、自分が怠けているからなのです、私が悪いのです」
「うまくやれるようにする方法を教えてください」
「怒らないですむ方法を教えてください」
「どうしたら彼がお酒をやめるのか教えてください」
「頭ではわかっているけれどやめられない、私はへんなのでしょうか?」
「子ども愛せない私は病気でしょうか?」

というおしゃべりループにはまってしまうことがある。
AC:おしゃべりループ?
Co:ポージェス博士のポリヴェーガル理論によれば、異なる状況においてそれぞれ適応的行動をとるための神経的基盤、自律神経がどのように機能するかは、発達の過程で状況に応じてその神経回路が用いるか決定づける能力が形成された。
ストレスの状況に応じて、社会的な行動と2つの自己防衛反応、闘争と逃走、さらに身を隠したり、死を装う不動状態である。(引用マーク)P6

例えば、
「彼氏と大げんかばかりしてしまうんです」
「怒りが爆発してしまう」
というようなクライアントさんの相談内容に、論理的に会話をすすめてもいっこうにセラピーがすすまないことがある。
AC:えー。
Co:トラウマ反応という視点を使うと、彼女の行動は人間関係の葛藤というストレスに対して、闘争反応を起こしていて、それは、彼女の意志、論理的な思考とはあまり関与していないかもしれないと読み解くことができる。
AC:はー。彼女は悪くない?
Co:うん、彼女の意志はあまり反映されていないかもしれないと。

とするとセラピーは、彼女の話される内容に沿った論理的な会話よりも、背後にある、感情や身体感覚、神経系の反応について共に探索し焦点をあてるカウンセリングを検討することにつながる。

AC:元夫に、ちょっとしたことで怒りが止まらなくなったことを思い出しました。
Co:うん。
AC:こんなにいっしょうけんめいやっているのになんでわかってくれないんだ!って。
Co:おー。
AC:彼のメガネを割ったり、Tシャツを破ったこともあります。それで、その後、ものすごく落ち込むんです。
Co:うん。たびたび起こる自分の爆発的な感情や対人関係の反応に自分自身が混乱するかも知れない。
AC:何やってるんだろう私?って。落ち込むんです。
Co:例えば、無自覚なトラウマを再現するような感情や身体感覚への刺激に対して、神経系がダイレクトに対応している状態かもね、闘争反応か、あるいは、解離反応だと言える。
AC:はぁ。
Co:自我が介在していない不随意運動だね。
AC:だから、頭でわかっているけど、止められない?
Co:そうだ。突然浮上してくる癒やされていない強い感情、触れたくない感覚の衝撃jから心身を守るための行動反応だね。
AC:はー、身体ってすごい。
Co:倒れるまで働いたり、取り憑かれたようにトレーニングしたり、危険なスポーツ、スリリングな状況に耽溺したり。はんたいに、感情をシャットダウンしたり、なかったことにして引きこもったり。
でも、反応に翻弄されて、スリカエていると満足をまったく感じられない。
浮上してくる自分にとって耐え難い感情に覆われないために、自分に主導権があるという自己制御感にとらわれる。それで、また、自己制御感が脅かされたと感じると、。衝動的な怒りをぶつけたり、Tシャツを破ったり。
AC:やめてください。
Co:ごめんごめん。目に見えないトラウマ反応を常に制御しようと、心身が消耗するので、疲れ切り、抑うつ状態になったりする。(Bコーク P112、ポージェス 参考文献)

AC:自分が嫌いになります。
Co:うん、無意識にトラウマ反応に翻弄されている状態とは、心身がばらばらに断片化していて、つながりを持てていない状態と言えるんだ。
AC:ばらばら?
Co:うん、複雑な状況にそれぞれ対応して生き延びてこなくてはいけなかったわけだから、例えば、闘争的な自己も居るだろうし、逃走的な自己もいるだろうし、シャットダウンする自己も必要であった。また、良心を大事にする自己も居た。それらが、つながりをもてなくて、単体で極端に機能してきたと言えるんだ。
そして、何よりも大事な点は、それらが、衝動的であれ、単体であれ、あなたを守ろうとする反応であることだ。そう、あなたの生き延びる力の源泉なのだ。
AC:えー。そんなことはじめて言われました。
Co:だから、まずは、自分の身体に何が起こっているのか? 痛みは? 違和感は? 症状は? などの声を聞いていく。そして、その時の感情や気持ちに意識をむけて心身をひとつひとつ「つなげていく」。
感情や身体感覚は心身をつなげていく機会になるんだ。
ほんとうのあなたになるために。
トラウマ反応とは、「つながり」を求めている訴えと言い換えることができる。私たちはつながりがない時に苦しむものだ。

ポージェス ポリヴェーガル理論入門 引用

2020.8.29

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