森の中で夢を見ている。遠くから間をおいて気の抜けた発砲音が聞こえる。戦闘がおわったのを知らない兵士たちなのだろう。そのたびに森の静寂がきわだつ。ぼくは倒れた…
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明石郁生

オンライン小説『リバウンド』rebound-070 キッチンとシャンパ…
「その女の子は治るの?」ビサはシャンパンにカシスをほんの少したらしている。グラスの中に細かな気泡がはじけてピンク色の液体がしずんでいく。「ドクターボノに…

オンライン小説『リバウンド』rebound-069 医師の指示通り使っ…
カワムラは吊るし上げられていたがタフだった。白い巨大な建物の陰に身をかわす術を心得ている。「最初から知っていたのではありませんか?」媒体名と所属、名前を…

オンライン小説『リバウンド』rebound-068 無力化。
夜明け前の深い森の中で芽が伸び続けている。個人の意志は下請けにだされる必要はない。そのものであることがそのものだ。個人の意志のネットワークは誰かの持ち物ではない…

オンライン小説『リバウンド』rebound-067 事実を構成する一団…
カワムラは自動販売機を背にして一団に取り囲まれた。数台のビデオカメラが低くブーンとうなっている。右から左にゆっくりと視線を移すと小さな録音機器や携帯端末、極小の…

オンライン小説『リバウンド』rebound-066 カワムラの頼み。
「頼みがあるのだ」彼が不意に言った。「この病棟の個室に、その・・・『セラ』リバウンドと思われる患者がいるのだ。彼女を助けてほしい。もう・・・どうにもならんの…

オンライン小説『リバウンド』rebound-065 カワムラと会う。
小男の運転するクルマは都心に近づき、見覚えの有るビルや地下鉄の入り口が見えた。小男は運転もうまかったが道を良く知っていた。右折ラインに入る車線どりやタイミン…

オンライン小説『リバウンド』rebound-064 患者は敵。
「君はだれのおかげで食えていると思っているんだ?」カワムラは理事長室で電話を耳にあてていた。「だれのおかげでその椅子に座っていられるのだ?」電話の主が続けた…

オンライン小説『リバウンド』rebound-063 芽が突き破る。
「ええまだですわ」小男が携帯に言った。大男はおもしろくないといった顔でぼくをにらみ、サイレンサーでぼくのあごを小突いた。拳銃はテレビや映画で見るより小さくそ…

オンライン小説『リバウンド』rebound-062 損得勘定に矢を放つ…
ネットカフェと夜行列車をのりついで早朝の都内に入った。ホームに降り立つと乾いた下水のにおいがした。あちこちでエアコンの室外機が唸っている。ダウンを脇に抱えて混雑…

オンライン小説『リバウンド』rebound-061 ぜんぶほんとうだ。…
夜更けにターミナル駅に降りた。現世の人々がそれぞれどこかに急いでいる。駅を出ると、雪は降っていないが路面が凍りついていた。ゲンがお客さんの忘れ物だと言って着…

オンライン小説『リバウンド』rebound-060 ぼくはぼくの問題へ…
小さな駅の待合室で遅い時間ののぼり電車を待つ客はぼくと腰の曲がった老婆がひとりだけだった。老婆は温泉地で何かを売る商売をしていたのだろう。大きな背負子が見え…