G研 統合的グループワーク研究会

ゲシュタルト・セラピー、プロセスワークのAC、トラウマへの対応、臨床的拡張の試み 

すこし前のアダルト・チルドレン(以下:AC)ブームは、機能不全家族から少なからず影響を受けた人々が、自身の苦悩を語る機会を開きました。しかしながら、ACとは診断名ではありませんので援助対象になりにくく、また、彼ら彼女らの苦悩は目に見えにくいため「キレル人」「(恋愛)依存」「高学歴ニート」「境界例パーソナリティ」などというレッテルを恐れながらどこに自分の援助や居場所があるのか探し続けています。

・複合型PTSDとは、心的外傷後ストレス障害(PTSD:精神疾患の分類と診断 DSM-Ⅴ)に納まりきれない人々を援助対象とするための研究用語です。音、イメージ、身体感覚、自己感覚、認知などがバラバラに断片化している状態です。
参考文献
<ベッセル・ヴァン・デア・コーク著:身体はトラウマを記録する,シナノパブリッシングプレス,2016.>

・精神力動的療法の視点では、幼少期児童期の養育環境における「自己愛」の毀損から生じた基底共依存という初期設定(子ども時代に生き延びるために装着した防衛機構)が、大人になっても固着している状態と捉えることができます。それらが変化や癒やしや回復を求めて浮上し、共依存(関係性依存)、さまざまな依存症、心身症、また、強い怒り、解離、依存と回避など特徴的なパーソナリティ構造などの表現型をとるのでしょう。
参考文献:
<斎藤学:インターネット社会の行動嗜癖-ギャンブル、ゲーム、そしてセックス,アディクションと家族,日本嗜癖行動学会誌,2022, Vol.37 No.2.><斎藤学著:『毒親って言うな!』,扶桑社,2022.>

・コフートは、傷ついた自己愛とは発達の段階で親密な対象との間で自己愛が満たされなかった状態なのだから、自覚を向け育て直すこと、治療は可能だと示唆しています。
参考文献:
<ハインツ・コフート著:自己の治癒,みすず書房,1995.>
自己愛の毀損から生じた発育不全がいつ頃、どのような体験であったのかに耳を傾け検証し、彼ら彼女らの支障について理解と共感を深めることは有効なセラピーを可能にするものと言えるでしょう。

・セラピー、ワークの実践者はこうした対象の受け皿として期待されています。ゲシュタルト療法は「いま、ここ」での気づきを通して、断片化した自己の統合を試みるアプローチとして発展してきました。また、プロセスワークという治癒的な場では、トラウマ反応はたんに治癒する課題にとどまらず、自分自身になろうとする力、命の流れ、目的を持った状態、精神的成長、自身の本質に近づくアートとして浮上するのでしょう。

ワークの行き詰まり、トラウマ反応がおこった時にどう捉えるか?
・人間関係のコントロール不全:混沌とした支配関係性、見捨てられ不安、飲み込まれ恐怖
・認知的コントロール不全:離人症、解離、真っ白、自分の気持ちがわからない
・不適切な自己感覚:他人の評価を自己評価の代りにする、他罰的/自責的(抑うつ)
・感情の問題:強い怒り、キレル自己、傲慢な自己、絶望的な自己
神経生物学的視点:シャットダウン、解離、逃避/闘争、社会的関与 、未成熟な自己愛問題

・・・関係性、つながりがないために私たちは苦しみます。この関係性には自分自身との関係性も含まれます。「私は愛されていないように感じる」が、「私は愛されていない」と混同される。また、恐怖を感じていることが必ずしも、その人の生活や幸せを脅かすことを意味しているのではないのですが、。思考の領域と外部領域、内部領域の区別がつかない状態。

自己愛とは他者との「関係性」の中で自分を愛すること(断片化された自己の統合)で育まれます。圧倒され、途方に暮れている「個人」ではなく、私の苦しみとは「変化」を生み出している他者やグループ(組織や世界)との関係性(大きな普遍的な流れ)の一部、「関係性」と感じられる時に、癒やしとなります。
参考文献
<ステファン・W・ポージェス著:ポリヴェーガル理論入門,春秋社,2018.>
<マーシャ・M・リネハン著:境界性パーソナリティ障害の弁証法的行動療法 DBTによるBPDの治療,誠信書房,2007.>
<アーノルド,ミンデル著:ドリームボデイ・ワーク,春秋社,1994.>

ミニエクササイズポイント:
・感情・身体感覚を表す姿勢(Feeling attitude)
・相関的・間主観的転移:FとWの民主化関係、Fの逆転移とWの変化は等価である。
Fが自身の内面、二者間、場に起こっている知覚にかかわり、Fが自身の責任をとる姿勢
「いま、ここ」において介入仮説を提示し、Wの採用または棄却の検証を繰り返しながら、W自身のアイディア、プロセスの浮上にかかわり続ける。
ex1:対照的な感情表現、WからのSV、逆転移感情の尊重と提示など
ex2:怒りや退行を受容をするが承認しない、無力感の支持、解離のホールド

・その結果、Wは複雑なトラウマ反応、例えば、飲み込まれ恐怖に対処する怒り、見捨てられる不安に対処するためのしがみつき、孤立感情に対処するための解離、呼吸機能の停止など、感情や身体感覚を恐ろしいものとして排除せず、Fとの関係性と共に、リプロセス(初期設定された不随意反応を、いま、ここの関係性において上書き、感情と認知が修正されて体験される治療的時間の経過)されていく。Wにとってこの体験は自身の内面に在るレジリエンス(自発的治癒力)を育てる機会を開くでしょう。

ファシリテーターコース資料:家族とAC研究室 明石郁生 臨床心理士 2022

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