ACの力とは?:引きこもる力 ac-alive-023

AC:ACの生きる力という考え方がだんだん面白くなってきました。目からウロコというか衝撃的です。(笑)
Co:うん、どういうところ?
AC:なんというか、うまく適応できない自分がだめだと思ってました。
Co:近代社会が長きに渡って生産性や合理性を求めてきたことの弊害かもしれない。適応できない人は負け組なんだと。だから、適応するようにと迫られる。

引きこもりさんを持つお母さんとのカウンセリングの事例を挙げる。
「息子とのつきあいかたがわからないのです。」
「いま、お母様はどんなお気持ちなのですか?」
「は?、。気持ちも何も、とにかく早くこのひどい状況から抜け出して、一人前の社会人になってほしいのです、息子はとてもまじめで良い子なんです」
彼女はこれまでどれだけ息子について配慮してきたか状況を詳細に、そして、自分がどれほど心配をしているのか涙ながらに語り続ける。
「いま、どんなお気持ちに気づかれてますか?」
「は?、。だから、息子の将来がとても心配でなんとかしてほしいんです」

私の10年間の臨床を振り返ると、引きこもり当事者と直接会う機会はほとんどなかった。家族療法という視点では引きこもり当事者に会わないで、彼ら彼女らに介入することがある。
AC:どのようにするのですか?
Co:カウンセリングに来られた方、さっきの事例だと、お母さんの自身の不安、あるいは夫婦関係をカウンセリングの場にあげるんだ。
例えば、カウンセラーは息子に同情しそうな気分を受けとめる。彼女は目の前にいるカウンセラーという大人との信頼関係や情緒交流を紡ぐ時間の経過が難しく、この「関係性」を息子に向けているのではないか、それは家族内で繰り返されているのではないかとカウンセリングの方向性を仮説するんだ。

AC:ちょっと思ったんですけど、このお母さんは自分が不安でそれを解消したいだけじゃないですか?だいたい、息子さんが自分をひどい状況だと思っているのかなんてわかんないでしょ?
Co:そうだね、ここが家族システムの興味深いところなんだ。

学校時代からずっと他人と仲良くしなくてはいけないと言われてきた。しかしながら、ひとたび社会人となると他人と競争して負かさなくてはいけないと迫られる。
もちろんこれは矛盾しているが、そこそこほどほどに他人との関係を持ち、生きていく柔軟性のある自己を形成していくことが大人になることの一つでもある。
親や養育者からの過剰な期待に苛まれ、そこそこほどほどでは親に許されないという頑なな信念を抱えて、結局、柔軟性を内面に育てられず、幾度も失敗を繰り返し自分の行先が完全に塞がれたと感じてしまう。
自分らしく居ようとすると親の期待に応えられない、親の期待に応えようとすると自分らしい力を発揮できない。これを、二重拘束(ダブルバインド)と言ってとても息苦しい心理状況になる。一歩も外にでれなくなることがある。

AC:・・・自分にも覚えのある感覚でちょっと苦しいです。
Co:二重拘束は家族内に限らず、社会システムとして毎日洪水のように流れている。
でも、そのあいまいさや空気を読んで生きていくことだけを適応的、健康と呼ぶかというとそうでもないと思う。

息子は社会や家族などからある種の脅威を感じていて、例えば、過度な期待や干渉、情緒の無関心、搾取などから自分自身の安全を優先している状態であるととらえるんだ。

Co:なので、息子の引きこもりとは、両親の情緒交流の疎遠さを彼が敏感に察知して、両親の情緒交流の促進を狙っている行動、メタファーと捉えるんだ。つまり、家族の崩壊を防ごうとして身を挺している状態だ。
AC:家族の崩壊を防ごうとしている?
Co:すごい力だろ?
引きこもる力とは、自分自身を守る力であり、家族の崩壊を防ぐメタファーであもあると捉える。家族療法の概念では、その力の発奮から家族や社会がどんなことを学ぶかに関心を寄せる。本人の行動とは誰に対するどんなメタファーとなのだろうか?と。
また、息子の引きこもり行動は、親や家族にとってどのようなやメリットがあるのだろうか?と。

2020.8.8

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