***ACという生きる力 連載エッセイ!

ACの力とは?:身体症状の力 ac-alive-024

身体症状の力とはわかりやすいかも知れない。古今東西、「病気を経験して人生が変わった」と言うエピソードを聞くことは少なくないだろう。
病気の回復を契機に仕事を変えたり、住む場所を変えたり、人間関係が変わったり、新しく事業を始めるという話はよく聞く話である。

AC:いったい何が起こるのでしょう?
Co:まず、身体症状に意識を向けることを通して、自分自身との関係性に変化を迫られるのだろう。例えば、病気やその回復の経過を通して、これまで知らなかった自分自身に出会うでしょう?
AC:自分自身との関係性?
Co:痛みに意識を向けることで、いままではあたりまえだと思っていたことができない苦しみや怒りに気がつくことができるだろう。足の指をほんの少し怪我しただけで、いつものように駅までダッシュできなくなる自分に気づかされる。
AC:あー、はい。
Co:病気や身体症状とは一般的にやっかいなものと考えられていて、できれば会いたくない存在でだね。例えば、頭痛や胃の痛みが出たりしても、
「これから大事な会議があるんだ、そんなのにかまってられない、。」と意志の力を使って合理化したり否認する。
AC:だって仕事ですから、ふつーだと思います。
Co:そうすると、そのうち痛みが我慢できなくなって、医者に駆け込んで、
「仕事があるから早く痛みをとってくれ!」と言うかもしれない。
AC:あー、言いそう。
Co:痛みという表面的部分だけをみて、自分自身を電子デバイスの部品のようにあつかうかも知れない。挙句の果てに、入院が必要になったとしても、
「俺がいかなきゃ会社が潰れるんだ、早く治して退院させてくれ!」と意志の力を全開ににして、痛みとの表面的な関係性のみを見て、排除しようとするかも知れない。意志の力は自分と自分の人生をコントロールできているという安心感をもたらすからだね。
AC:えー、でも痛みは嫌だし、早く取り除きたいものですが、。
Co:うん。もし、痛みに意識を向けることができて、いつものように仕事ができない自分を受け入れて、そうした時間の経過とともにのっぴきならない症状と格闘しつつ、周囲の助けを借りたり、他の方法の工夫に気がついたりするかもしれない。その過程で、これまでの意志の力の及ばない、自分自身の予感、「死」を感じたとすれば、
いま生きている現象である、痛みがもたらす、「命の流れ」に謙虚な気持ちが湧かずにはいられなくなると思う。
AC:ほー。

ドリームボディという概念を提唱しているアーノルド・ミンデルは、身体症状は必ずしも病理的ではなく、癒やしたり、排除したり、治療すべきたんなる病気ということはない。症状は潜在的な意味を持ち、目的を持った状態である。すばらしい人生の始まりにもなり得るし、また人を自らの存在の中心に驚くほど近づけることもできる。さらに、症状は異世界への旅となり得るのみならず、人格発達の王道であり得る、と述べている。
<引用文献>アーノルド・ミンデル著:高岡他訳,ドリームボデイ・ワーク,春秋社,1994

Co:退院後、彼は意外な自分の言葉にびっくりするかもしれない。
「ひとりで抱え込まないで、苦手な部分は助けてもらおう、そのほうが仕事はうまくいくものだ。俺がいなくても」
「家族との時間を創ろうと思う。だって、仕事は人生のすべてではないと気づいた」
「食事が美味しいと思える」
「草花に目がいくようになった」

これまで気がつかなかった新たな自己、新しい自分との関係性が育まれたと言える。
身体症状に意識を向けない、排除し続ける、その成れの果ては容易に想像がつくだろう。いきつくところは、例えば、仕事上でのおおきな事故、意志の力に頼りすぎて他者との信頼関係が破綻するかもしれない、あるいは、身体を終焉させる重大な病気の発現だ。
AC:なるほど。
Co:季節や自然が変化するように私たちの身体は肉体の死という変化にむかっている。
それに伴い、自分との関係性も変化を求められる。身体症状は、私たちを変化の入り口につれていってくれるのだ。
身体症状とはそういう意味であなたの力なのです。

2021.11

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