***ACという生きる力 連載エッセイ!

Ⅵ章:ACという生きる力 ac-alive-071 傷ついた自己愛を育て直す。

6-2 傷ついた自己愛を育て直す

Co:彼は失ったものを狂おしいほど求め続けてきたのだろう。
AC:・・・とても共感できます。
Co:自分とは誰かに望まれていたのか、すこしでも愛されていたことがあるのか?と。
AC:ずっと探し続けている?
Co:うん。安心や存在の確認をせずにはいられないだろう。
対人関係において自分の存在を揺るがすような困難に直面した場面に対処するには、
デフォルトの内面体験、例えば、無条件に愛された体験が必要になるだろう。
そうすれば、学業や恋愛で失敗したとしても、一通り落ち込んでから、
「う〜ん。悔しいけれど、まあいいか、。」と、どんなときでも誰かに愛されている体験、内在化された他者からの関心によって自分を守ることができるのだろう。

AC:そうかー。内面の根にある体験を手がかりにして、いまの自分をそのまま受け止められるんですね?
Co:そうだろう。
AC:だとすると、急に不安になりましたが、発達段階で、えー、無条件な愛や関心を得ることができなかった、えー、私たちは、ずっと自分を受け止められずに苦しみ続けるんですか?
Co:良い質問だね。そのことを知りたくて私はこの仕事を続けているのかも知れない。
AC:はー。
Co:そのことを書きたくてワークを続けているんだ。
AC:ほー。
Co:私の小規模な検討では、どの段階、どの年齢からも、そうした自分に自覚を向け、かかわりを向けるとりくみを続けることで、傷ついた自己愛を育て直すことを可能にすると言えそうなんだ。できる限り根拠を提示できるように、臨床事例を精神医学、心的外傷の研究者、臨床心理学などの先人の研究事例に照らし合わせ考察することは、駆け出しの私にとって最も重要な研究なのです。先人の仕事、研究に敬意を表したい。
AC:ふむ。
Co:その試みを精神療法と呼ぶのかもしれない。現在では、心身を統合的に捉え、治療者とクライアントに起こる関係性を用い、個人セッションと集団心理療法を併用するアプローチなどが注目されている。複数の構成員からなる家族との間で育むことが難しかった、承認や親密性あるいは分離個体化などの修復体験にとりくむ試みなんです。
AC:いつからでも修復できるものなんですね?ちょっと安心しました。
Co:うん、ケースバイケースだけど。すくなくとも「自分」を見つけるための試みは、人生を生き生きとした時間の経過にすることができるのではないかと思う。もちろん、セラピーやワークなどに取り組むことなく、本人も知らないうちに、例えば、成長の段階で出会う、周囲の好意的な大人、学校の先生、クラブのコーチ、友人、上司、職場などの人間関係の中で、自己愛を育て直す機会にめぐりあうこともあるだろう。
AC:ほー、なるほど、周囲も本人も気がつかないうちにね。
Co:うん、人間の出会いと別れは自己の成長においてとても大切な機会なのだとあらためて気づかされる。
AC:別れもですか?
Co:うん。別れるから、新しい出会いがあるのだろう。それには、自分との関係性における、出会いと別れも含まれる。生き延びてきた力を持つあなたのひとつの側面とはいずれ、別れる時期が来るだろう。
AC:新しい自分と出会うために?
Co:そう。自分の中にある他の側面を体験することは癒やしとなるし、傷ついた自己愛に栄養を与えることになるのだろう。
AC:なんのためになるの?
Co:・・・「私」という自由な自己を創造していくために、かな。

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