***ACという生きる力 連載エッセイ!

Ⅲ章:ACの力を肯定するセッションー傷ついた自己愛が由来する基底依存としての共依存 ac-alive-036  02.12.2022

Co:さて、子ども時代に体験した親密な人々との関係性の傷つきや歪みが、大人になった私たちの生活や仕事、人間関係に大きく影響をしていると話してきた。
AC:傷ついた自己愛でしたね? (第一章、008ー傷ついた自己愛 参照)
Co:自己愛の毀損。
AC:あらためて自己愛について考えてみると難しい言葉です。一般的に言われている自己中とは全く違う言葉ですね?
Co:そう、全く異なる。ここでは精神療法の用語として使う。人として生きることの尊厳、誇り、存在意義、自分自身を愛し守る意識などが傷ついている状態。
AC:・・・生きること自体がとてもたいへんなことになりますね?
Co:うん。自分自身の内面に流れている自然な感情や身体感覚に抗ったり麻痺させたり、閉じたりしなくてはならないだろう。
AC:うー。
Co:関心を持って欲しい、愛して欲しい、触れて欲しい、抱きしめて欲しい、わかって欲しいとは自然な感情だね。生命の流れと言ってもいいね。
AC:うー、命の流れに抗ったり麻痺させしまうって言うのはよくわかります。
Co:また、大人になるとは、自分の感情や身体のケアを自分で行う必要が生じる過程なのだが、あー、それを人生と呼んでもいいと思うけど、自分がいまどんな状態で、どんな人間関係、情緒の支えが必要で、どのような健康へのケアが必要なのかわからず、特に、親密な他者とどのような愛情交流をしていいのかわからなくなるかもしれない。
AC:うー。
Co:いま、どんな気分?
AC:・・・ちょっとつらいです。
Co:うん、いまこの時間をいっしょに味わおう。ゆっくり呼吸して、。
AC:え?、はい。
🐰

Co:さて、自己愛の毀損とは、幼少期、児童期に不安定な養育者との関係性で傷ついた状態であると話してきた。ACを肯定するセッションを視点を持つ私たちセラピストは、クライアントさんが、どんな傷つきをいつ頃体験して、それで、どんな希求をしたのかを可能な限り正確に特定する姿勢が必要になる。
AC:どういう意味ですか?
Co:うん、発達段階のいつ頃どのように傷ついたのかを知ることは、最初のトラウマ反応を知る手がかりとなる。例えば、孤独と焦燥感、空腹と空虚、絶望に関してどのように対処したのだろうかと。
AC:最初のトラウマ反応?
Co:うん、心理学で言う闘争、逃避反応というとわかりやすいね?
AC:あっ、はい。
Co:養育者との関係の中で、例えば、寂しいのに、関心を得られないときにどうするかな?
AC:えーと、泣く、。
Co:それでも得られない場合は?
AC:泣き叫ぶ。
Co:それでも得られないときは?
AC:うー、泣き叫んで叫んで、。その後、たぶん、叫ぶのも泣くのもあきらめる?
Co:うん。得られないものを、闘争逃避反応に加えて、シャットダウンするかもしれないし、またくりかえしずっと助けを求め続けるかもしれない。
AC:・・・けなげですね。
Co:それらは、ほとんどが無意識に行われる。生き延びるために。
AC:はー。
Co:その最初の反応とそれに呼応した行動を基底依存としての共依存の起源として捉えるんだ。
AC:うあー、自己愛の毀損が共依存に?
Co:うん、そして基底依存を正確に捉えることで、表現としての依存、例えば、物質依存(アルコールや薬物)、恋愛依存症、セックス依存(自慰依存含)、ギャンブル依存症、電子媒体・機器(SNS、スマホ等)、買い物、ゲーム、アダルトビデオなどなど。
心身症についてはあとのセッションで話すよ。
AC:表現としての依存?
Co:うん、最初のトラウマ反応が大人になって表現されている。
AC:あっ、生き延びるために?
Co:そう。得られないもの、例えば、無条件の愛情や関心、安心などを求め続ける。
AC:うあ~。なるほど。それは必死に得ようとしますよね、得られるまで?
Co:そうだね、その力が依存の中核にあるんだ。
AC:ほーーー。
Co:だから、依存へのエネルギーとは生き延びるための表現でもあり、力でもあるんだ。
AC:えーーー!
Co:だから、単に解消するだけではもったいない(笑)生き延びる力なんだから。
AC:うえー! どどどんな力なんですか?
Co:例えば、自分が何者かわからないときや、自分のケアがわからない、と、他者や世界のケアに邁進したり、頭を真っ白にするために何かに耽溺するだろう。たぶん、命をかけて。自分の命の流れを感じるために力を行使する。
AC:あーなるほど、すごい力を使うわけですね?
Co:そう。生き延びるために。
AC:はー。それで、我を忘れて依存してしまうわけですね?
Co:うん、それが依存のメカニズムと言えるだろう。
でも、大きな力でもあるが、やりすぎると、いまここにいる自分自身をも失うという大きなリスクを伴う。そして、また、それを埋めるために依存に拍車がかかる。
AC:はー。
Co:だから、止めたいがやめれない自分を責めるのではなく、その力を肯定するアプローチをするんだ。あなたにとってアルコールとは?
AC:えっ。えーと、リラックス、自分へのご褒美かな。ときどき記憶をなくすけど。
Co:その力は、リアックスしたり、自分にご褒美を挙げたりする力は、アルコールにあるんじゃなくてあなた自身の内面にある力だとすれば?
AC:えっ? えーーーー。
Co:うふふ。

2022.02.12

<参考文献>
斎藤学:インターネット社会の行動嗜癖ーギャンブル、ゲーム、そしてセックス􁴕,自己愛と共依存の問題についての精神分析における自己心理学という治療法,日本嗜癖行動学会 熊本大会 講演:2021
斎藤学:共依存と自己愛パーソナリティ障害,アディクションと家族 日本嗜癖行動学会誌 ,June 2020 Vol.35 No.2, P106

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