***ACという生きる力 連載エッセイ!

Ⅳ章:「自分の専門家」になる冒険 ac-alive-052   矛盾を味わう道のり。

さて、自分の専門家になる冒険とは、矛盾を味わう道のりでもある。
ユングは、自身の内面に可能性を探求しパーソナリティを練っていく道のりを個性化と呼んだ。私のケースでは、自分を探求しエッジにとりみ個性化の道をたどりはじめると、孤独を味わう時期が訪れた。
AC:さっきから孤独という言葉がでてくるけど、寂しくなるということですか?
Co:うーん、少し違う。例えば、良い人をやめていくと、これまでつきあってきた友人や知人らと疎遠になる。ほんとに会いたい友人に会い、これまで良い人と思われたいと惰性で続けてきたつきあい関係などはどうでもよくなってくる。
AC:つきあいのわるいやつ?
Co:そうだ。ひとりで過ごしたり、休んだりすることが多くなった。気がついたら、がらっと周囲の人々が変わった時期をおぼえている。
AC:ほー。
Co:閉じこもっているとは違うんだよ。自分自身としっかり繋がれているから、そんなに寂しくもない。孤独とはわるい感情ではないと思う。ひとりで海行ったり、散歩したり、ワイン飲んだり、音楽を聞いていることが、寂しくて楽しい。会いたいときは会いたい人や機会に出向いていくよ。
AC:良い人をやってたときはどういう気分だったんですか?
Co:そうだなー。たくさん友達がいて、いつも打ち合わせや飲み会が多くて、それが、寂しくないことだと思っていたかもしれない。でも、誰かと誰かの情緒的な間に入ったり、気の乗らない仕事に参加したり、幹事さんのようなことをよくしてた。でも、よく、落ち込んだり、身体を壊してた。(笑)
自分が誰で、自分の人生にどういう希望を持っているのかわからなかったんだと思う。
AC:それらがわかってきたら、孤独を感じるんですね?
Co:うーん、ほんとはね、なんだかよくわかないんだ。
AC:えー?
Co:生きづらい感覚、ワーカーホリックなどというアディクションは、背景に引っ込んだけど、まだ、自分とはなんなのかよくわからない。ただ、この進む道自体が、自分らしいなと思う。少なくとも私の人生だと。
AC:ひょっとして悩みって、あーずっと解消されないものなんですか?
Co:自分を知るための道具なんだろうと思う。どんどん意味が変わっていくが。それを、人生と呼ぶのかも。だとしたら、。自分の専門家になったほうが面白くない?
AC:そーですね。
Co:ところで、自分を知るための手がかりのひとつである臨床心理学は、人生を6回生きたとしても学びきれない程の質量がある。限界設定と必要十分条件を受け入れないと家族や職業人生が破綻するかもしれない。溺れて飲み込まれるだろう。
自分を知る道とは、自分を手放さなければならない道でもある。私は開業カウンセラーで、人間理解について学ぶ姿勢が必要なのだが、カウンセリングとは常に仮説→実践→検証のくりかえしで、いつでもクライアントに教えてもらう必要がある。人間理解やトラウマセラピーには特効薬や唯一の療法は存在しない。自分の実践へ謙虚な信念をもちながら、同時にネガティブな面を意識しておかなければいけない。おまけにもう少し言うと、
クライアントからもらうお金はとても大切だ。カウンセラー自身の自尊心や家族の生活を支える。しかしながら、お金のことだけで心の問題をとりあつかうことは難しい。
AC:なんだか、ずっと、矛盾を抱えている?
Co:そうだな、常に二律背反だ。クライアントの物語に共感しつつ、ひとりの人間としてこの世界の不完全さを嘆き、不条理を呪い、生物学的な怒りを受容する。そして、ときどき自分のために嗚咽する。
Co:・・・もしかして、それでいいんだ?

2020.9.30

 

 

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