Ⅳ章:「自分の専門家」になる冒険 ac-alive-045 コンセプト その1

Co:ここでは、まず、「問題」が問題なのである。あなたが問題なのではない。問題とあなたの関係が問題なのである。(White&Epston 引用)というナラティヴ・セラピーのアプローチから「自分の専門家になる」について話していく。
AC:問題が問題?
Co:悩みや苦しみとは、自分の対応や能力が悪いから罰を受けている状態だ。社会に順応できていないあなたが問題なんだ。が近代社会だね。
AC:ええ、。だから、悪い自分をなんとか治さなければいけないと。
Co:そうやって問題は創られていく。
AC:ん?
Co:社会や世間体の見方が優勢なストーリーは適応とみなされ、それ以外は、不適応として排除されて問題とされてしまう。例えば、「うつ」という医療者の説明で構成された現実が適応された人々は、それ以外の、繊細さ、郷愁、あるいは、現状に怒りや不満を持つ変化への動機などは、ないもの、とされてしまう。
AC:問題とはひとつの見方?
Co:そうだ、これを社会構成主義というんだ。
AC:じゃあ。その問題に、えー、固執しなくていい?
Co:ずっと、適用できない自分、治らない自分を責めてしまう。そうすると、問題から離れられない状態になる。
AC:問題イコール私。
Co:私はうつ。私は犠牲者。そこに自己同一性が働いて、それを保つのが日常となる。
AC:損する気分。
Co:そうだ。だから、このコンセプトは、あなたが問題なのではなく、あなたと問題との関係性が問題なのである。という視点から、犠牲者という人生を反転させて探索を始めることができるんだ。
一例として,ホワイトとエプストンという研究者の文献から事例を紹介する。

慢性喘息少年へのナラティヴ・アプローチのケース :

10歳で慢性不安定性喘息と診断された少年は,生命も失うほどの状態での入院を経て,両親と家庭医の最大の努力にもかかわらず,喘息はコントロールできなかった。皆の心配は,再度,生命を脅かすほどの発作を起こすのではないということであった。
カウンセラーは,彼が喘息へのケアを両親に依存していることを観察する。カウンセラーが彼と共に,喘息をずるがしこい“トリックスター”と擬人化して外在化すると,
彼は自分のことを不注意で無防備な,わなにかけられた人として描写するに至った。そうすることで彼はカウンセラーと共に,“トリックスター”のわなの戦略を十分に探求し,近づいて来ているのを知るための方法はピークフローであると位置づけることを可能にした。
彼は,喘息のことを忘れて日常生活に戻る変わりに,“トリックスター”に対して注意深くなることにして,“トリックスター”のやり口や手段を学ぶためにノートを使うことにした。それは,ピークフローを,定期的に記録することであった。
彼は,日々,“トリックスター”についてのエキスパートとしてのキャリアを積み,これを喘息のリサーチ・プロジェクトと位置づけるに至った。
さらに,もし,彼がもっと“トリックスター”について知ったら,“トリックスター”は,彼を支配できなくなると気づくに至った。彼は,喘息という問題を外在化する前は喘息患者ではあったが,喘息無知者でもあった。
彼は今では何が喘息を起こせるか,何が喘息を防ぐことができるのかを知り,自分は喘息のトリックについて知っているという専門知識を持つに至った。彼は,喘息のリサーチ・プロジェクトにのめり込み,これを学校科学展に出品することになった。そして,彼は,喘息により制限されていた自己と自己拡張との間のジレンマに直面することに成功し,自分のライフスタイルとして後者を選んだ。彼は喘息患者という地位を捨てて,喘息に支配された他の少年少女のカウンセラー役を引き受けることになった。

<参考文献>
(White & Epston共著  小森訳 物語としての家族 1992)
(White & Denborough,  小森訳  ナラティヴ・セラピーの実践 2000)

2020.9.16

 

 

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